戦場カメラマンが「ウクライナ戦争の劇的なニュース」に感じた違和感
ウクライナ戦争は情報戦の激しさが特徴的です。しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏声明を出すという、AIによるフェイク画像の生成方法「ディープフェイク」の技術を使ったフェイク動画が出回るなど、フェイクニュースも多くあります。 フェイクニュースに左右されないために、どのように情報を見極めていけばいいのでしょうか。戦場カメラマン・渡部陽一さんが自身の経験をもとに語ります。 ※本稿は、渡部陽一著『晴れ、そしてミサイル』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
「生きた情報」から知る戦争
現地に出向き、生身の人と接するからこそ感じ取れる情報があります。そうした「生きた情報」に触れてみることは、そこで暮らしている人たちの生活を知るヒントになるはずです。 たとえばウクライナ戦争では、戦闘要員の対象年齢となる18~60歳の成人男性は原則として出国が禁止されました。これが世界中で報道されると、日本に住んでいる人たちや、世界各国からは「戦争している国の中に閉じ込められるなんてひどい」といった声があがりました。 しかし、ウクライナに入り、話を聞いてみると、実態は「閉じ込められる」というニュアンスとは少し違うように僕は感じました。ウクライナの人たちは家族や地域のつながりが密で、ウクライナという国のために自分ができることをいつも探している、オープンマインドな人たちが多いです。 大事な自国が戦争に巻き込まれた今、自分にできることがあるならウクライナにいたい、ここで国を守りたいとおっしゃる人も少なくありません。ウクライナ国軍の人に限らず、ふつうに暮らしている市民の人々からも、こうした声をよく聞きました。 外から見て考えることと、そこで何十年と暮らしてきた人たちの姿勢にはギャップがあるものです。ウクライナが大規模な兵力を有するロシアの攻撃に耐え抜いている背景には、ものすごく強い軍隊の存在というよりもむしろ、一人ひとりが助け合い、支え合う、ウクライナの人たちの「優しい連帯」があるようにも感じ取れます。