戦場カメラマンが「ウクライナ戦争の劇的なニュース」に感じた違和感
溢れる「フェイクニュース」の見抜き方
情報戦の激しさが特徴的な、今回のウクライナ戦争。情報の持つ力は、戦況、そして国際情勢を左右するほど強くなっています。武器に限らず、情報が相手を攻撃し、徹底的に破壊してしまうこともあります。 しかし、中にはフェイクニュースもたくさんあると言われています。ウクライナ戦争では、AIによるフェイク画像の生成方法「ディープフェイク」の技術を使って、ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏声明を出すというフェイク動画が出回りました。 ほかにも、TikTokやTwitterで公開されている、一般市民の動画や投稿が、実はある人たちによって、自分たちの主張を有利にもっていくためにつくられたものだったり、主張に合わせて編集・加工されていたりすることがあります。画像の編集や加工の技術はどんどん進化していて、一見しただけでは見破れないものも増えています。 では、フェイクニュースに左右されないために、どのように情報を見極めていけばいいのでしょうか。
戦争映画のような「面白い」映像に注意する
僕はいろんな情報を見るとき、面白すぎる話や映像、気持ちよすぎるストーリーには注意するようにしています。映画のように面白く楽しめるような情報が流れてくると、「ちょっと、できすぎていないか?」と警戒するんです。 ウクライナ戦争が始まった頃も、流れてきた情報を見て、「あ、これは明らかにフェイクニュースだな」と気づいたことがありました。 2022年2月24日、ウクライナの首都キーウの国際空港に、ロシア兵が上空からパラシュートで次々と降り立った、というニュースが飛び込んできました。ロシア軍の兵士が降り立つ動画まであったのです。 ロシア軍には、輸送機からパラシュートなどを使って地上に降りられる空挺部隊があり、ウクライナ戦争以前も中東などで活躍していました。その部隊の兵士たちがキーウに次々と降り立つ映像は、プーチン大統領が描く物語のスタートとしてあまりにもできすぎていると思いました。 というのは、その時点でキーウ上空の制空権は、当然ウクライナが持っているわけです。ウクライナ国軍が約20万人もいて、キーウ中心部の上空にロシア軍の巨大な輸送機、しかも軍用機が入ってきたら、ウクライナ国軍のレーダーでキャッチするはずです。 それなのに、ロシア軍の兵士が何十人もキーウの地に降りてこられるというのは、戦争映画の始まりの場面のようで、「できすぎている」。僕はこの映像を見て、「ああ、これはフェイク動画の戦いが始まったな」と思いました。 以降、似たような怪しいニュース、動画がたくさん出てきました。たとえば、ずらっと並んだロシア軍の大きな戦車が、弧を描いて進行し、首都キーウに向かっていくモノクロの動画なんてものもありました。まるで第二次世界大戦時代の映像のようです。 アリの大群のようにずらずらと戦車が並んで行く。橋の手前で戦車が止まり、戦車の前でロシア兵がコーヒーを飲んでいる。 戦争映画のようで、見ている分には「面白い」のだけれど、やっぱりおかしいですよね。これだけの戦車が大移動するのに燃料はどうしているんだろうとか、正規軍を持っているウクライナの首都手前まで、ロシア軍の戦車が列をなして乗り込んでこられるわけがないとか。ちゃんと見れば、おかしなことはたくさん見つかるのです。 でも、「本当に戦争が始まったらしい」と情報が錯綜しているタイミングで、こんな映像が届くと、「これも本当に起きていることかもしれない」とうっかり信じてしまう。僕も実際に映像を見たとき、一瞬「え?」と釘づけになりました。