大手新聞社と製品化した新聞整理・保管袋が主力の企業、破産を招いた二つの問題
製袋事業やアメニティー事業を手がけていたスピンドルは、2024年3月1日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。 【グラフ】倒産件数の推移 同社は1979年に設立され、大手新聞社の拡販向け販促グッズを中心に取り扱い、主に大手新聞社と共同で企画し製品化した新聞整理・保管袋を主力商品としていた。整理・保管袋は新聞読者に毎月配布され、毎月変わるデザインが幅広い層に長年親しまれていた。そのほか、東京、大阪、福岡などを営業エリアに、ポスターやパンフレットなどの印刷物や式典用の表彰状、トロフィーなどセレモニーグッズの販促物の企画・製作も手がけ、2010年1月期には売上高約39億5000万円を計上。近年は、製袋事業の売り上げが落ち込んだため、コインランドリーの経営支援事業も開始し、出店を希望する一般法人や個人を対象にコインランドリー運営のコンサルティングも行うなど経営の多角化を図っていた。 しかし、同社は従前から二つの問題を抱えていた。一つ目は創業者である前代表に対する多額の貸し付けや仮払い。21年時点でトータル約16億円に上っていたが、同氏の死去に伴いほぼ同額の退職慰労金を支給し、相殺した。二つ目は06年ごろより始めた粉飾決算。金融機関から資金を調達するため、売り上げの水増し、借り入れの過少計上などを行っていた。 こうした中、23年11月に逼迫(ひっぱく)する資金繰りを改善させるため定期預金を解約。結果、金融機関との関係が悪化し、24年2月には融資交渉が不調に終わる中、準則型私的整理の利用を試みたが、こちらも金融機関の賛同を得ることができず、事業継続を断念することとなった。 新聞購読者減少という時代の流れによる売り上げ減少に加え、創業者への資金融通も行っていたこともあり、資金繰り改善のため粉飾決算に手を出し、一時は資金を確保したようだが、金融機関にその悪事が露呈したことで万事休すとなった。(帝国データバンク情報統括部)