ジオラマに着手!海面は塗るというより海を“描く”イメージで【達人のプラモ術<ハーバータグボート>】
海は塗装ではなく色を塗り重ねて描いていく
波のカタチができたら、丸一日乾燥させます。乾燥後に不自然な部分をデザインナイフやヤスリを使って削る、あるいは追加でモデリングペーストを盛るなどして細部を仕上げたら、いよいよ海面を塗装していきます。 さて塗装と書きましたが、海の色の再現はなかなかに難しいです。 単に青色をスプレーで塗ればOKというワケにはいきません。場所や季節、天気でも海の色は変わりますよね。以前製作したUボートのジオラマは、嵐の北太平洋ということで、暗い青灰色で海面を仕上げました。冬の日本海は暗い…。一方、南太平洋といったら鮮やかな青といったイメージですよね。 ちなみに日本の伝統色では、海の色を海松色と表現しており、英語名ではオリーブ・グリーンと訳される渋い色です。具体的には海藻が浮かぶ茶味と黒色をおびた深い黄緑色…。つまるところ青や緑といった単純な色ではなく、複雑に重なり合った色を表しています。 何が言いたいかといえば、ジオラマの海も色を重ねることで深みや質感を表現していきましょうということです。強いて言えば、ジオラマの海は塗るのではなく、描くといったところです。なので海面の着色は筆塗りがおこないつつエアブラシを隠し味に使って仕上げていきます。
海の色は西海岸のイメージで
今回製作のハーバータグボートはアメリカはロサンゼルス港で使われているということなので、じゃあ太平洋のカリフォルニア…ウエストコースト(なんか80年代)なのねということで、青味の強い海のイメージで色を重ねています。とは言うものの、海の色に決まりはないので、自分の思う色で仕上げればいいと思います。 先にも書いたように海面は基本筆塗り。今回はラッカー系塗料を使用しています。ベースのモデリングペーストは塗料を選ばないので、水性アクリル塗料、絵画用のアクリルガッシュなども使用できます。 青系の色で塗装後に白を使い波頭や艦舷、スクリューで泡立つ水面のハイライトを塗装していきます。この際ベタで白を塗るのではなく、ドライブラシ技法を使い、モデリングペーストで製作した波の凸部分にのみ白を乗せていくことで波らしさを強調します。 ピュアブルーの上から海の透明度を表現するため海面の凹部分や波の根元などに影色となる黒をエアブラシでランダムに入れていく。 さらに海の透明感を表現するために、「LP-81調色用ブルー」(青の顔料のみで調色された白を含まない透明感ある青)を重ねて、それが乾かない内にMr.カラーの「C138クリアーグリーン」をランダムに乗せて、ブレンディングしていく。 ▼ブレンディング ブレンディングは、塗装面上で塗料を混ぜながら(ブレンドしながら)塗るという意味。本来は画面上で色を混ぜてグラデーションや陰影に変化をつける油絵の技法。近年プラモデルモデルの塗装でも良く使われる塗装テクニックのひとつ。 ▼ドライブラシ ドライブラシは、筆に含ませた塗料をウエスなどで拭き取って、筆がほとんど乾いた状態にして擦りつけるようにパーツの凸部分色を乗せていく塗装技法をいう。主にモールドを強調したい時に使われる技法で、基本べースの色よりも明るい色を使用する。筆は毛の腰が強いものを使うとやりやすい。