腹が凹むとこんなにいいことがいっぱい。日本人が“腹凹”にトライするべき理由(専門家が監修)
誰もがつねに気になるお腹! 夏を前に「今年こそバキバキに割るぞ!」と拳を高く突き上げるのも結構だが、お腹をいきなり「割る」のではなく、まずはハードルを下げて「凹ます」ことをターゲットに据えることをおすすめしたい。「凹ます」のは「割る」ほど難しくない。それに、見栄えがよくなるほか、病気リスクが下がるなどメリットいっぱい。「腹凹」のご利益を知って、今すぐ生活改善にトライ。[取材協力/栗原毅(栗原クリニック東京・日本橋院長、医学博士)]
内臓脂肪こそが生活習慣病を引き起こす
腹を凹ますためには、腹を内側から膨らませる内臓脂肪を減らすのが先決。 すると、お腹まわりがスッキリするばかりか、病気に罹りにくい体質に整えられる。なぜなら、内臓脂肪こそ、働き盛り世代を悩ます生活習慣病の総元締めだからだ。 体脂肪を溜めるのは、脂肪細胞という専門の細胞。脂肪細胞は長らく体脂肪を溜める単なる倉庫のようなものだと軽視されてきたが、その後密かな役割が明らかになった。なんと、脂肪細胞はホルモンに似た物質を分泌していたのだ。その脂肪細胞が分泌するホルモン様の物質を「アディポサイトカイン」と呼ぶ。 腸内細菌と同様に、アディポサイトカインにも、善玉と悪玉がいる。善玉の代表格は「アディポネクチン」。カラダを蝕む酸化を防ぐ抗酸化作用に優れている。 悪玉は多士済々。たとえば、「アンジオテンシノーゲン」は血圧を上げるし、「TNF-α」は血糖値を下げるインスリンの効き目を落として糖尿病の引き金となる。この他、「PAI-1(パイワン)」は、血管内で血栓という血の塊を作りやすくし、血管が詰まって起こる心臓病や脳卒中のリスクを高める。 内臓脂肪が溜まると、善玉が減り、これらの悪玉が増えることがわかっている。健康寿命を少しでも延ばしたいなら、内臓脂肪を落としてお腹を凹ますことが最優先課題だ。
内臓脂肪が溜まっている人は危険な脂肪肝でもある
体脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪以外にも、“第3の脂肪”がある。それが「異所性脂肪」。“異所”、つまり本来なら溜まらない場所に溜まっている脂肪という意味。その代表格が「脂肪肝」だ。 脂肪肝とは、肝臓の内部に脂肪が溜まりすぎた状態。健康な肝臓に脂肪はほとんどないが、肝臓の重さの5%以上脂肪が溜まっているのが、脂肪肝。 腹部超音波検査で指摘されることもあるが、健康診断の血液検査で必ず測る「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」という肝臓の酵素の値でも脂肪肝の有無はわかる。 「ALT30超だと脂肪肝の疑いが濃厚であり、成人の15%が相当するとされています。個人的にはALTは5~16が理想だと考えています」 多くの人では、脂肪肝は内臓脂肪より先につきやすい。お腹が出るほど内臓脂肪が溜まっているタイプは、脂肪肝を覚悟した方がいい。脂肪肝があると、筋肉(骨格筋)に血糖を取り込むインスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすい(下グラフ参照)。