トヨタ、70周年を迎えたクラウンの専門店「THE CROWN 東京虎ノ門」オープン 今春発売予定のクラウンセダン特別仕様車“THE LIMITED-MATTE METAL”先行公開
トヨタ自動車は1月7日、クラウン専門店「THE CROWN」の5店舗目、6店舗目として東京都港区の「THE CROWN 東京虎ノ門」と大阪府吹田市の「THE CROWN大阪千里」を開業し、THE CROWN 東京虎ノ門でオープニングセレモニーを開催した。 【画像】「クラウンセダン“THE LIMITED-MATTE METAL”」 また、この開業に合わせ、THE CROWNのみで販売する特別仕様車シリーズの第3弾となる「クラウンセダン“THE LIMITED-MATTE METAL”」を先行公開した。 特別仕様車のクラウンセダン“THE LIMITED-MATTE METAL”は今春ごろの発売を予定しており、「クラウンクロスオーバー」「クラウンスポーツ」に設定されている既存の“THE LIMITED-MATTE METAL”同様、ボディにはツヤ消しクリア層の上に特殊表面処理「TMコート」を施し、持久力のある防汚性と汚れ除去性を与え、機械式洗車機も利用可能となる特別なボディカラー「マットメタル」を共通のアイデンティティとして継承。外観ではこのほかにマットブラック塗装ホイールも採用している。 また、インテリアではコンソールリッドやドアアームレストをブラックラスター色とした専用内装が与えられ、ステアリングホイールやシフトセレクターの表皮にディンプル加工を施してシックで上質な室内空間を演出。助手席前方には特別な1台であることを示すレーザー刻印も刻み込まれている。パワートレーンはクラウンセダンに設定されるFCEV(燃料電池車)とHEV(ハイブリッドカー)のいずれも選択できるとのこと。 ■ クラウンは1955年1月7日に発売されて70周年 オープニングセレモニーでは、新型クラウンのチーフエンジニアを務めた清水竜太郎氏から70年にわたるクラウンの歴史と今後の展望について解説された。 純国産乗用車として1955年1月7日に発売された初代クラウンは、当時の道路環境や利用実態などに適合するようなデザインや構造が与えられ、個人利用から社用車、公用車、タクシーなど幅広く活用された。3代目クラウンでは、開発主査を務めた内山田亀男氏が街を走るクルマのボディカラーが明るい色になってきていることに着目。これからはマイカーとして乗用車を手に入れる人が増えていくと考え、クラウンに初めて白いボディカラーを導入して、公用車や社用車向けというイメージからの脱却を図り、車両開発でもゆとりある高速長距離セダンをテーマとして室内寸法や静粛性の高い車内空間をアピールして個人ユースのオーナーが急増することになったという。 “クジラクラウン”とも呼ばれる4代目クラウンは先進的なスタイリングや外国人女性モデルを起用するファッショナブルな広告などが裏目に出て販売面では苦戦する結果となったが、「日本を代表する高級車として盤石な地位にありながら、敢えて変革に挑戦する精神を象徴するモデル」として清水チーフエンジニアは賞賛。7代目クラウンでは「いつかはクラウン」というブランドを象徴するキャッチフレーズが登場し、セダン、ハードトップ、ステーションワゴン、バンという4つのボディバリエーションを備え、国産車で初めてエンジンにスーパーチャージャーを導入して話題を集め、日本のステータスシンボルとしての地位を確立した。 こうした歴史を持つクラウンの16代目となる新型開発では、「クラウンとは何か」を見つめ直すところからスタート。初代クラウンの開発主査である中村健也氏の「信念をもって人にモノを売るということは、『自分の心でいいと思うもの、本当にお客様の心が入ったものをつくる』ということだと思います」という言葉に加え、歴代主査が時代ごとにどのような想いを持ってクラウン開発に挑んできたのかを考え、原点に立ち返ったときに「常にお客さまの幸せを願い、新しいことに挑戦して進化を積み重ねてきた歴史がある」と見えてきたと説明。これこそ革新と挑戦のスピリットであり、トヨタが押し進めている「もっといいクルマづくり」の原点になっていると気付いたことで、駆動方式やボディ形状といった固定観念に囚われることなく、ユーザーのことを真剣に考え、時代に沿った新しいクラウンの開発を進めることができたと述べた。 また、クラウン開発に注ぎ込まれた革新と挑戦のスピリットは販売面にも活用され、トヨタ初の車種ブランド特化型ディーラーとしてクラウン専門店のTHE CROWNが2023年10月にオープン。THE CROWNではユーザーの多様なライフスタイルに寄り添い、クラウンを中心として人と人が交流する店舗を目指しているという。 THE CROWNでのユーザーとの関わりを通じて得たアイデアや知見が車両造りにフィードバックされており、クラウンクロスオーバーの一部改良と同時にリリースされたオーバーフェンダー装着の特別仕様車“LANDSCAPE”のほか、市販予定のない車両ながら、パレード走行などに利用される「オープンカー」も製作。この車両はプロ野球などの優勝パレードは1日警察署長といったさまざまなイベント・行事に貸し出して盛り上げていく「社会貢献・地域貢献」、革新と挑戦のクルマ造りに必要となる技術を伝えていく「技術伝承」の2点を目的として製作した。 オープンカー車両はクラウンの生産拠点であるトヨタ自動車・堤工場で生み出され、クラウンらしさを残しつつ、乗る人もデザインの一部として採り入れて不自然に見えないように工夫するデザインを試行錯誤の末に生み出しており、この製作活動を通じて“教え・教えられる風土”を社内で培っていくという。 清水チーフエンジニアは新たな特別仕様車であるクラウンセダン“THE LIMITED-MATTE METAL”についても新しい挑戦の1つと位置付け、ユーザーの声を反映してクラウンに新しい個性を追加するモデルであると解説。 また、“THE LIMITED-MATTE METAL”シリーズはこれまで第1弾としてクラウンクロスオーバー、第2弾としてクラウンスポーツに設定されているが、それぞれ想定を超える注文が舞い込む人気モデルになっていると明かされた。 このほか清水チーフエンジニアのプレゼンテーションでは、クラウンが登場して70周年を迎えたことを記念して、1年にわたりユーザーに対してテーマ別にさまざまな特別体験を提供していくと発表。この取り組みを表わす「DISCOVER YOUR WAY」というキーワードとロゴマークが示された。 ■ 虎ノ門はクラウンにとって聖地 THE CROWN 東京虎ノ門 グランドマイスターの伊藤裕氏は店舗解説に先立ち、トヨタと虎ノ門の関係性について説明した。 2019年に販売チャネル統一でトヨタモビリティ東京になる前の東京トヨペットは、1953年に虎ノ門に本社を構えて設立。当時は全国の乗用車販売で3割を東京が占めており、乗用車市場は品質やコスト面で勝る輸入車が中心となっていた。しかし、そんな東京で国産乗用車を普及させることができれば日本市場を席巻することになり、日本の産業発展にもつながるとの考えから、販売網強化の一手として東京トヨペットは誕生したという。 この流れと並行してメーカーであるトヨタでは日本初の純国産乗用車として初代クラウンの開発に取り組み、当時の最新技術を採り入れた初代クラウンはちょうど70年前となる1955年1月7日に虎ノ門の東京トヨペット本社で発表会を開催。1万8000人もの来場者が訪れた発表会は話題となり、国産乗用車に対する関心が高まってその後の普及につながるきっかけになったと強調。この歴史の振り返りから「虎ノ門はクラウンにとって聖地である」と位置付け、THE CROWN 東京虎ノ門のコンセプトを「この聖地から、クラウンとの新しい絆を。」に設定して、クラウンとの絆、人との絆を大切にするさまざまなサービスを提供していく。 THE CROWN 東京虎ノ門では、新型クラウンが持つ魅力をしっかりと体感できるよう、高速道路を使った特別試乗会に加え、日をまたいだ長期試乗プログラムなども実施する計画。さらにクラウンとの生活がスタートする特別な日を演出する特別納車プログラム「CROWN Premiere Ceremony」、クラウンオーナー向けのイベントなどを実施する「ハンドレッドオーナークラブ」などの準備も進めているという。 THE CROWN 東京虎ノ門 店舗概要 所在地:東京都港区虎ノ門 1丁目2-13 営業時間:10時~17時 建築面積:958m2(トヨタモビリティ東京 虎ノ門店を含む) 延床面積:2695m2(トヨタモビリティ東京 虎ノ門店を含む) 電話番号:03-6369-9845 ■ クラウンにまつわるキーワードを語るスペシャルトークセッション オープニングセレモニーの後半にはスペシャルトークセッションを実施。プレゼンテーションを行なった清水チーフエンジニアとクラウンのチーフデザイナーである宮﨑満則氏に加え、ゲストとしてモデルのマギーさん、サッカー元日本代表の中澤佑二さんの計4人で「革新と挑戦」「自ら切り開いた道」「大切にしてきた信念」といったクラウンにまつわるキーワードをテーマにトークを展開した。 新しくなったクラウンの印象について質問された中澤さんは「16代目のクラウンはデザイン面で本当にチャレンジしていると思います。僕の思い出にある、中学生とか高校生のころに見たクラウンは、サーファーだった友だちがクラウンに乗っていて『いいな~』って思っていました」。 「新しいクラウンは、近所に住んでいる“ちょっとお金持ち”の人の家に茶色と黒の2トーンのクラウンクロスオーバーが止まっていて、最初に見た時は『これは何だ、どこのクルマだ?』と近くを3~4往復して、そこから『この外国のクルマは何だろう?』と思って、あとで調べたらクラウンだったのですが、これがクラウンだということに衝撃を受けましたね。外国のクルマだと最初は思いました、僕もクルマが好きなのでいろいろと見るんですけど、このデザインが(クラウンというイメージは)僕の中になかったので、え!?って最初は驚きました」とコメント。 これを聞いて清水チーフエンジニアは「都内って輸入車がたくさん走っているじゃないですか。そこで存在感を得るためにはあれぐらい、少し尖らないといけないんじゃないかということで、ああいったデザインは世の中にほかにないと思うので、ある意味でデザインも革新と挑戦をいうスピリットを表現しているかなと思います」と説明した。 マギーさんは新型クラウンについて「クラウンって、中澤さんも言っていたように、みんなの中に子供の時から記憶にあって、『クラウンと言えばコレ!』っていう記憶と思い出が皆さんそれぞれにあって、それをよい意味で敢えて壊して、また新しいクラウンを造っていくというのはすごく勇気があることだと思います。現代のニーズに合わせたデザインを、クルマの中も外もデザインを変えていくということは、普通はなかなかできないことだと思うんです。それまでにあるデザインを続けて見せていくということは多いと思いますけど、敢えてガラッと変えて、それが新しい世代の人の心に突き刺さっていくというのはさすがクラウンだなと思います。本当に凄いですね」と感想を述べた。 この言葉に対して清水チーフエンジニアは「クラウンって、伝統があって大変長い歴史がある中で育ってきたブランドであるが故に、マギーさんも言ったように、なかなか壊せない壁というものが正直なところあったのですが、それを敢えて変えにいくというのが今回のチャレンジの1つでした。このように評価していただいて、あらためてチャレンジしてよかったなと。最初はドキドキでした、本当に受け入れていただけるのか心配だったですが、このように言っていただいて、うれしいですし励みになります」と感謝の言葉を口にした。 この話の流れから「自ら切り開いた道」というテーマにバトンタッチされ、司会者から歴史と伝統あるクラウンを大きく変えていくことに迷いや苦労はなかったのかと問われ、清水チーフエンジニアは「正直なところ、迷いはやっぱりあったと思います。とは言いつつ、いったん『変えよう』というマインドになって、方向性がそちらに向いてからは本当に早かったです。開発メンバーの皆さんにも『変えてやろう!』というマインドが強くあったので、ある意味で変えることが目的の1つになりつつ、一方でクラウンが培ってきた伝統や歴史をしっかり織り込んでおかないと、クラウンではなくなってしまうんです。いかにクラウンらしさ、僕らは『クラウンネス』と呼んでいますが、このクラウンネスをいかにクルマに残して、時代に合うクラウンを造っていくという点が非常に悩ましいというか、悩みながらやっていました」と回答した。 また、宮﨑チーフデザイナーは「進化させるためにはどこかで伝統を変えていかなきゃならないという部分があって、デザインの面で言うと、リフトアップしたセダンというものは、ありそうでこれまでにはなくて、それを造るというコンセプトの部分だけでなく、リフトアップしながらちゃんとクルマとして成立させていくことが、今になればとても大変だったと思います。タイヤがこれだけ大きくて、骨格がしっかりしていたことがクロスオーバーではよい方向に働いて、この欧州車に負けないだけのパッケージがあったので、それに頼りながら造りました」と説明した。 最後のトークテーマとなった「未来への挑戦」については、4人がこれから挑戦したことを漢字1文字で表現して、事前に記入したボードを紹介。清水チーフエンジニアは「紡」で、これはトヨタ自動車につながるトヨタ紡績のほか、歴史と伝統をクラウンが紡いできたことで現在がある、さらにこれから70年、100年と紡ぎ続けていかなければならないという想いを表わしていると説明。 宮﨑チーフデザイナーは「伝」で、デザインはコミュニケーションとイコールであり、クラウンをこのデザインにしたことをしっかりと伝えていきたい。そして世界中の道にクラウンが走ることで世界中にクラウンが伝わっていき、それが伝統になるという意味を込めたと語った。 マギーさんは「羽」。今年は羽が生えたように軽やかに、自由に世界を飛びまわりたい。自分が興味を持ったことをとことん追求したいと2025年の意気込みを述べた。 中澤さんは「金」で、これは「おかね」のことではなく、「金メダル」のことを示したもの。自分の娘2人が打ち込んでいるラクロスが、2028年に開催されるロサンゼルスオリンピックで正式種目となることから、2人がラクロスの代表選手としてオリンピックに出場し、それを助けてやりたい。できることなら日本代表のコーチに就任して、自分と娘たちで力を合わせ、強敵のアメリカ代表を倒して金メダルを獲るという目標を実現するため頑張っていきたいと力強くコメントした。
Car Watch,佐久間 秀
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