誕生100周年を迎えたL.L.Beanの「フィールド・コート」はアメリカの服飾文化遺産だ
ハンターたちから高く評価された機能性アウター
1924年に今日のフィールド・コートの原型となる「メイン・ダック・ハンティング・コート」が登場した。これはビーン氏が、アウトドアを楽しむためにみずから開発したものだという。発売されるやいなや、ハンターたちの間で評判となった。
「フロントポケットの内側に散弾銃の弾を入れるループが付いていたり、内側のウエスト部分に獲物を入れるゴム製のゲームポケットがあったり、高い実用性がハンターたちに評価されました。 1947年には、名称が現在のフィールド・コートに変更されました。ハンティングの名は省略されたものの、当時もユーザーのほとんどがハンターでした」
その後、基本的なデザインはほとんど変更されていないという。現行モデルを詳しく見てみよう。
「時代によって若干の違いはあるものの、ボディの素材はコットン100%のダック生地です。これは太いコットンの糸で織り上げた高密度の平織り生地で、しっかりとしたハリのある、丈夫なつくりが特徴です。表面には撥水加工が施されているので、少々の雨をものともしません。襟と袖口には、コットンの16ウェールのコーデュロイ生地があしらわれています」 このコートの故郷であるメイン州の冬の寒さは厳しい。そのため、身頃の裏地には起毛したコットンのフランネルを使うことで保温性が高められている。ただ、着心地のよさを確保するため、袖の裏地はナイロン素材に切り替えられている。
もともとはハンティング用のコートだったこともあり、機能的なディテールが随所に見られる。
「もっとも特徴的なのは、両肩に縫い付けられたガンパッチでしょう。これは肩で銃を支える際、服の生地を保護するための当て布です。狩猟以外のシーンでも、バックパックやショルダーバッグのストラップで生地が傷むのを防ぐ役割が期待できます」
ハンティングの際は地図や弾丸、ナイフなど多くの道具を持ち運ぶ必要がある。そのため、身頃の左右にはハンドウォーマーを兼ねた大型ポケットが、左胸にはジップポケットが設けられている。 肩や腕には、動きを妨げないための工夫も施されている。肩は腕の可動域を高めるバイスイングショルダーという仕様に。また、アームホールも大きめに作られているため、腕が動かしやすく、かつ重ね着をしても窮屈さを感じにくい。