高齢者の命守る「ガルドシート」 高校生考案、ビジネス甲子園V
新しい商品やサービスを提案する「第23回全国高等学校ビジネスアイディア甲子園」(大阪商業大学、毎日新聞社主催)で、栃木県立矢板東高校2年の小沢絢子さん(16)、大山紗和さん(17)、大島唯羽さん(17)の「高齢者を自動車事故から救う『ガルドシート』」が6305点の応募作品の中からグランプリに輝いた。小沢さんは「最終目標は実用化」と夢を膨らませる。【有田浩子】 3人は高校の授業「総合的な探究の時間」で、興味のあった「医療系」のゼミを選択し一緒に活動を始めた。 着想のきっかけは今年8月、福岡県で路線バスと軽乗用車が衝突し、7歳と5歳の姉妹が死亡した事故。腹部をシートベルトで強く圧迫された「シートベルト損傷」により死亡したとされる。小沢さんの問題意識を3人で具体化していった。 筋力が落ち、体も小さくなる高齢者にも、子どもと同じようなリスクがあるのではないかと考え、高齢者用の補助カーシートにいきついた。 第1案のデザイン完成後、さらに詳しく知るため、「探究」学習主任の星野広之教諭(34)にすすめられた論文を読み、シートベルト損傷の専門家や医師らに話も聞いてアイデアを詰めていった。 チャイルドシートと同様、シートと車の固定金具を連結するだけで取り付けられる「アイソフィックス」を採用。前に滑りにくくするためブースターシートや、車イスに使われている、座面を後ろに向けて下げる構造を取り入れた。身長などによって座面の高さを調整できるようシートの上下を分けた。肩の左右と腰にシートベルトをかけ、力を分散させるためベルトの幅は広くした。 その間、他の医療系のコンテストにも応募し、評価を受ける中で、高齢者のプライドを尊重し、自然と乗りたくなるようなおしゃれなデザインに知恵をしぼった。全体のフォルムに丸みを出したり、色も選べるようにしたりした。また、価格も5万円としていたのを2万4000円に抑えた。 「ガルドシート」の「ガルド」はフランス語で「守る」の意。当初考えていた名前がすでに商標登録されていたことから、対話型AI「チャットGPT」を使い、ふさわしい名前を探し出した。 決勝は7組が出場。アイデアだけでなく、実際に作ったものを披露したグループもあったが、星野教諭は「デザインを考える中でコンセプトが絞られ、シートベルト損傷に関わる人に実際に話を聞けたこともあって説得力が増した」と手応えを感じたという。 グランプリ受賞に大山さんは「自信につながった」。大島さんは「医療系の職に進みたいと思っていたので、高齢者の体の仕組みについて知るいい機会になった」と話した。