長崎の被爆体験者の救済 波紋呼ぶ“低線量被ばく”の評価
8月9日に総理大臣との面会が実現する見込みの被爆体験者。今月、長崎市の附属機関と厚労省がそれぞれ公表した報告書が救済を遠ざける恐れがあると波紋を広げています。 【写真を見る】長崎の被爆体験者の救済 波紋呼ぶ“低線量被ばく”の評価 長崎市 池田章子議員: 「自分に都合よく書き換えられているとか、信用できないと切り捨ててるんですよ。《うそとは失礼だ》ってなぜ市は(国に)抗議しないんですか?」 6月18日の長崎市議会で池田議員はこう述べ、市の姿勢を質しました。 『信用できない』と国が切り捨てたのは《被爆体験者》救済の足掛かりとすべく、長崎県・長崎市が調査を要望していた被爆体験記です。 ■「悔しい。自分達が証言してるんだからそれを捉えてもらいたい」 1945年8月9日、上空で炸裂した原爆から雨や灰と一緒に広がった放射性物質。 当時の状況を探るため国は国立の施設で所蔵する13万を超える体験記を精査し、被爆地域外で雨に関する記述が《41件》、飛散物は《159件》確認されたと今月発表しました。 しかし国はこの結果について「体験記はデータとしての信頼性に乏しい」「記憶を修飾している可能性がある」と評価し「雨などが降ったことを客観的事実として捉えることはできなかった」としました。 当時、灰や燃えかすが雪のように降ってきたと証言する被爆体験者・濵田武男さん。被爆者認定を求める裁判を16年続けています。 被爆体験者 濵田武男さん(84) 「本当…悔しいね。自分達が証言してるんだからそれを捉えてもらいたいね。本当のことをね」 ■広島では認められた被爆地域外の「黒い雨」 当時の行政区分で線引きされた長崎の被爆地域。「被爆体験者」は半径12キロ圏内の被爆未指定地域にいた人たちを指す国が作り出した呼び名です。 広島では裁判での勝訴をきっかけに被爆地域外の「黒い雨」被害者を救済する新基準が作られ、この2年間でおよそ6千人が新たに被爆者と認められました。 一方、長崎に関しては「被爆地域以外で広島のような雨が降った証拠がない」「降ったとしても線量は低く影響ない」とされています。