長崎の被爆体験者の救済 波紋呼ぶ“低線量被ばく”の評価
この低線量被ばくの影響に関して今月、10年半にわたる議論の末まとめられた報告書が市に提出されました。 ■評価が分かれる「低線量被ばく」の人体への影響 長崎市原子爆弾放射線影響研究会。医学、物理学、疫学の専門家が最新の文献や情報を収集。被爆体験者区域の線量を最大20ミリシーベルト前後と推定し、その影響について議論してきました。 長崎市原子爆弾放射線影響研究会 朝長万左男会長: 「実際ここら辺(被爆体験者区域)から白血病が出たとかがんが出たとか、地元の開業医の方のカルテはかなりあります。しかしそれが本当に放射線誘発かというのは証明されていなかった。微妙なこの低い線量というのは福島でも起こってるわけですよ」 人体への影響が認められているのは年間100ミリシーベルト以上。しかし近年、この「100」に届かない線量でも人体に影響があることを示す研究結果が出てきており、“低線量被ばく”に関する委員の評価は割れました。 朝長会長: 「最近の一番極めつきはこの論文でしてNature Medicineという医学論文の中では最高の論文です。『《この領域》でも影響がある』という結果が出ています。我々の研究会ではこれを検討しましたけども、委員の一部が、どうも年齢分布とか色々なものが原爆被爆者の場合と異なっていて『簡単には信用できない』というわけですよね。『もう一つ信用できない』とおっしゃったために委員会としては《この領域の低線量》で(人体影響が)起こることを断定することは避けました。してません」 論文は、ヨーロッパ9か国で95万人を対象に行われた疫学調査です。子どもが受けたCTによる低線量被ばくが癌リスクの増加につながっていると報告しています。 朝長万左男会長: 「低線量の影響があることを報告した大きな論文が2つ出てますからね。これは今出たばかりの論文なんで(これから)世界中で評価されていくからね。この1~2年で低線量域の人体影響が非常に議論されると思うんですよね。その結果くらいまで見ないと世界の動向はもう一つ分からないけど、僕はこの論文は二度と出ぬような(重要な)論文だと思いますね」