阪神に「死のロード」はもう死語? それでも投打ともに「8月の急失速」が不安視される理由
「死のロード」はもう死語?
さて、この8月の長期ロードだが、かつては「死のロード」とも呼ばれていた。しかし、現在では死語になっているという。その理由は97年に大阪ドーム(現京セラドーム)ができ、一時帰阪できるようになったこと。また02年、阪神監督に就いた星野仙一氏が遠征先のホテルの快適さや、移動手段の時間短縮化実現を理由に「もう、死のロードなんて言わせない!」と言い切ったためだ。 とはいえ、本当に「死語」になったのだろうか。「選手たちも、8月の長期ロードを気にしなくなった」との意見は多く聞かれたが、京セラドーム完成以降、阪神の長期遠征の勝敗を調べてみると、昨季までの27年間で勝ち越しに成功したのは9回だけ。「死語」と言い切った星野氏の監督時代も02年は5勝10敗1分け、03年も4勝11敗と大きく負け越している。 昨年こそ18勝5敗と圧勝したが、岡田監督の第一次政権下の5年間(04~08年)で、勝ち越しに成功したのは2回だけ。04年=9勝9敗1分け、リーグ優勝を果たした05年は10勝9敗1分けだったが、06年=9勝11敗、07年=12勝8敗1分け、08年=6勝8敗。5年間の通算成績では勝率5割以下だ。今年は15日現在で5勝7敗となっている。 20年以降にしても、6勝8敗1分け、21年=7勝8敗、22年=10勝14敗であり、18勝も挙げた昨年を除けば、今も「死のロードはある」と言っていい。 「12年から15年の和田豊氏(61=現二軍監督)が指揮を執っていた4年間は、3度も勝ち越しを決めています。その後を引き継いだ金本知憲氏(56)も3年間で2度勝ち越しています。矢野燿大氏(55)も大きく負け越すことはありませんでした。でも、9月以降の終盤戦で失速する傾向が見られました」(ベテラン記者) 星野氏が主張したように宿泊ホテルでの快適さ、移動手段の時間短縮は本当だが、今季の8月遠征は24試合が予定されている。そのうち、阪神が京セラドームを「ホーム」として使うのは6試合だけ。「ビジターチーム」として東京、横浜、名古屋、広島を遠征する。その「ビジターチーム」のルーティンを指して、こんな話も聞かれた。 「試合前練習はビジター、ホームの順番で行われます。午後6時スタートのナイトゲームなら、3時にはグラウンドに出て練習を始めます。5時前からウォーミングアップを始めるホームチームと比べ、暑さで体力を奪われるのはどちらなのか、説明しなくても分かりますよね」(元阪神選手) それだけではない。調子を落としている選手の早出特打ち、「打ち込みをしたい」と思っている選手の練習場所の確保が難しくなってくるのだ。ビジターチームの練習場の確保に関する相談があれば、ホームチームも“お互い様”で室内練習場の利用時間を割り当てるが、本拠地球場とビジターチームの練習場では勝手が異なる。時間制限などもあって思う存分、練習ができないという。 「ホームチームは試合後、球場に残って居残りのティー打撃をやったり、トレーナーにマッサージをしてもらったりします。ビジターチームはユニフォームのまま移動バスに乗り込み、宿泊ホテルに向かわなければなりません」(前出・同) こうした表には見えないビジターチームの不自由さが「8月の負け越し」につながり、さらに「好調な阪神打線を失速させる原因になるのでは?」と懸念されているそうだ。