【社会人野球】二大大会“年間8勝”で「常勝」の礎を築いた三菱重工East 勝因の一つは大川GMのマネジメント力
「Westも早く追いつかせたい」
社会人野球で強豪と言われるチームの戦力は紙一重。どこが頂点に立ってもおかしくない。 「勝つ、勝たないは、強運がついていないといけない。自分たちではコントロールできない要素がある。勝ってもおかしくない準備、実力の上で、最後まで上り詰めたのは、幸運もあったと思います。一度(黒獅子旗を)、手にできたのは、来年以降にも生きてくる。お腹いっぱいか? と聞かれればそうではない。連覇、3連覇。ずっと勝ち続ける常勝チームを目指しています。私の仕事としては、いつもベスト4に以上に名を連ねるチーム状況にまで持っていく。勝ち負けは、その時次第の部分もある。来年はもっと強い手応えがあります」 大川GMは言うまでもなく、三菱重工Eastに加え、三菱重工Westの強化も抜かりはない。 「EastはEastで強くなりつつあるが、Westも早く追いつかせたい。平均年齢が4歳違う(若い)んです。4年後、Westは今のEastになる。そして、さらにEastは強くなる。私の中でイメージしているのは、ベスト4に常に2チームが入り、覇権を争うのが理想の構図です」 都市対抗で悲願の頂点に立っても、大川GMは「最高。こんな感じなのか……」と喜びに浸ったのも束の間「涙は出なかった。やってきたら、こうなるよね」と俯瞰している自分がいた。「一つ達成はしましたが、休んではいられない。周りも強くなっており、社会人野球そのものがレベルアップしている。チーム力の向上は激しいです。ライバルチームも黙ってはいない。ウチが火をつけているのは、間違いない。僕が休むと、チームは弱くなる」。王者だからこそ、現状に満足することなく、むしろ危機感が芽生えている。 「ウチはコンセプト、芯がしっかりしている」。再編・統合した2021年からのチームスローガン「“フェアプレー” “チャレンジ” “ビクトリー”~正真正銘のトップアスリートからなる常勝チーム~」は不変。揺るがない信念がある限り、チームはブレない。 都市対抗初優勝以降、大川氏の下にはGMのノウハウについての問い合わせが相次いだ。 「どうしても、選手採用の部分がクローズアップされますが、それは氷山の一角。GM職の30分の1にも過ぎない。見えない部分で、たくさん仕事があります。あるチームに説明すると『ウチにはできない』と断念しました」 チームを運営する以上、編成にゴールはない。より強固な集団を構築するため、大川GMは果てしない「強化」という名の道を突き進む。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール