東京・町田市の住宅庭に有害な酸欠空気 リニア地下工事の直上で気泡発生
10月22日午前6時。東京都町田市小野路町に住むMさん(男性)は、自宅の庭に水が湧き、ブクブクと気泡が噴出するのを見て驚いた。85年間も同じ場所で生きてきて初めてのできごとだ。 Mさんは水道管の破損を疑い、市水道局の職員に来てもらうが、職員がその場で試薬を使った簡易試験を実施すると、通常なら水道水の塩素に反応する色が出ず「水道水ではない」と説明した。そこで、Mさんが次に疑ったのがリニア中央新幹線の工事だった。 Mさん宅から約200メートルの距離には、JR東海が2034年以降の開業を目指すリニア中央新幹線を建設するための施設の一つである立坑「小野路非常口」がある。そこを昨年7月25日に発進した直径14メートルのシールドマシンは、今年10月にはMさん宅から十数メートル離れた場所の地下約50メートルを掘削していた。 庭の異変の連絡を受けた市民団体「リニア中央新幹線を考える町田の会」のメンバーは、現場の視察後、すぐにJR東海と工事事業者である「安藤・間JV(共同企業体)」(以下、JV)に「すぐに来て!」と連絡を入れた。JVの職員は来訪すると、検査のために水を採取していった。 この工区は「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(01年施行)に基づき、地下40メートル以深の工事であれば地上に住む地権者と無交渉で施工できる。Mさんは「私はJR東海から何の説明も受けていない」と原因不明の気泡を恐れている。
JVは即マシン稼働停止
シールドマシン掘削で気泡が湧いたのはこれが初めてではない。 18年と20年にはNEXCO東日本(東日本高速道路)による東京外かく環状道路のトンネル工事で、直径16メートルのシールドマシンが都内の世田谷区内を掘削中、野川という川にジェットバスのような気泡が湧いた。この時シールドマシンは土を掘削しやすくするよう掘削面からシェービングクリーム状の「起泡薬剤」を噴出していたが、気泡がマシンに回収されることなく、酸欠空気として川に湧いたのだ。