F1メカ解説|2024年、多くのチームがバランスに苦しむのは決して偶然じゃない……複雑すぎる”グラウンド・エフェクト”。苦悩は来年まで続くはず
ダウンフォースの変化
各チームは今年、こういう妥協にさらに苦労しつつあるようだ。アストンマーティンのエンジニアリングディレクターであるルカ・フルバットは、現在のマシンに起きていることを説明するのは非常に簡単だが、それを克服するのは非常に難しいと示唆する。 F1で問題となっているバランスの問題について、フルバットは次のように語った。 「これは我々の問題だが、チームの無線を色々と聞いていると、かなり一般的なことのように感じられる」 「現在のマシンは、コーナーに進入する段階で旋回するのが難しい。空力のプラットフォームは、旋回中の様々な段階で、フロントに悪影響を及ぼしながらも、リヤに負荷をかけるのに役立つと言えるだろう」 「つまりコーナー進入時にニュートラルなマシンであれば、エイペックス前まではアンダーステアになり、コーナー出口ではオーバーステアになることがある。以前はそれほど極端ではなかったこの変化は、これらのマシンが非常に高いダウンフォースを発生するようになっているため、ますます明確になってきている」 フルバット曰く、現行のレギュレーションが2022年に導入されて以降、ダウンフォース量は約45%増えたと示唆する。このことは、チームがパフォーマンス向上を目指しながらもポーパシング(フロア下で発生するダウンフォースが増減することで、車体が上下に跳ねるように動いてしまう現象)を引き起こすことなく、常に綱渡りのような形でマシンを走らせていることも意味している。 「マシンの下の空気の流れが適切であるため、バウンシングが少し減ると、ダウンフォースを少し増やすためのアップデートを試みることができるようになる。すると、ポーパシングが戻ってくる」 そうフルバットは語る。 「このレギュレーション下でのマシン開発を進めれば進めるほど、バウンシングが発生するリスクが高まる。これは2025年末までは対処しなければならないことだ。そして、2026年に別のレギュレーションを導入する理由のひとつになっていると思う」 「ドライバーたちは、公には言わないものの、ポーパシングについて不満を言っていて、腰痛を訴えるドライバーも数人いる。これは、対処が必要なレギュレーションの要素だと思う」 しかし完璧なラップを走るためには、ダウンフォースの問題に対処するだけでは不十分だ。なぜなら、前述の通りタイヤの挙動も重要だからだ。基本的には、片側のタイヤがもう片方のタイヤよりも発熱してしまうと、グリップのレベルが安定せず、オーバーステアやアンダーステアが過剰になってしまう。つまり、トラブルの原因になる可能性があるのだ。 フルバットはこれについて、次のように続けた。 「車体のフロアを上下させる空力的な力によるマシンの挙動変化だけでなく、タイヤのグリップがどう変化するかも重要だ」 「モンツァの予選で、アウトラップのウォームアップの手順が、全く異なるモノになったのは偶然ではない」 「予選では、レースで見られるよりも深刻になる可能性があるバランスの問題を隠すため、タイヤを特定の温度まで上げようとするものだ」