F1メカ解説|2024年、多くのチームがバランスに苦しむのは決して偶然じゃない……複雑すぎる”グラウンド・エフェクト”。苦悩は来年まで続くはず
フロントウイングの問題
バランスの問題を解決するのが難しいのは、パフォーマンスに影響を与えるエリアが以前とは大きく変化し、今ではフロアが最も重要な要素になったためだ。 以前は各チームとも、マシンのバランスを整えるために、フロントウイングのデザインを活用していた。しかし今ではフロントウイングは、それほど大きな影響を及ぼすツールではない。 フルバットはこれについて、次のように付け加えた。 「以前のレギュレーションでは、ダウンフォースはフロントウイングで1/3、フロアで1/3、リヤウイングで1/3を発生していた」 「そのため、ダウンフォース全体の約7割をフロアで発生するようになった今のマシンと比較すると、バランスを調整するという面で、ウイングがより重要だったのだ」 「バランスを取るためにフロントウイングが果たせる能力は、実質的に半分になってしまった」 最近では一部のチームがフロントウイングを故意に動かす……つまりフレキシブルウイングとして活用しているのではないかとして、話題となっている。これも、よりバランスを取るための施策である。低速でのアンダーステアと高速でのオーバーステアを克服するための最善の方法のひとつは、空力の負荷に伴い角度が変化するウイングを使うことだと、各チームは認識したのだ。 ウイングの角度を変えることで、低速コーナーで追加のダウンフォースを得ることができる。また高速走行時にはウイングが寝る格好となるため、空気抵抗を削減することができる。このフレキシブルウイングを使うことができなくなれば、バランスの問題に対処する上で、さらに苦労することになろう。 FIAはこの点において2025年から変更すべきか、それを見極めるために様々な検証を行なってきた。しかしフルバットは、状況が変わることはないだろうと考えている。 「2025年のレギュレーションを変更する意図はないと思う。なぜならルールで許されている中でウイングが曲がるという事実は、マシンの最適なバランスを見つけようとする試みの一部だからだ」 そうフルバットは言う。 「これは、グラウンド・エフェクトマシンの必要悪だと思う。より硬いウイングでは、ドライバーがコントロールするために有効なセットアップを見つけることはできないだろう」 結局のところ、今季多くのチームがバランスに苦労していることは、現行のレギュレーションが非常に複雑であり、それに対処するためにさらに複雑な妥協が必要であったということを示唆している。そして2026年に次世代のレギュレーションが導入されるまで、バランスに関する悩みは尽きないということだろう。
Jonathan Noble, Franco Nugnes