歌も踊りもてんでダメ…そんな戯女にあったのは“プロデュース”の才能! 王子と秘密の共闘で敵討ちを目指す中華ファンタジー【書評】
とある国の王子と戯女。ふたりの関係は切なくも燃え上がる身分違いの恋人同士…じゃない!? 【漫画】本編を読む
後宮を舞台とし、とある男を共通の仇として共に戦う。王子と戯女、ふたりの隠されし復讐劇の様子を描いた物語。それが『喜花坊の寵姫 恋と縁は宴より始めよ』(酒井さゆり:漫画、和知杏佳:原作、セカイメグル:キャラクター原案/KADOKAWA)だ。 楽宮とは、皇帝ほか国の政に携わる人々が開く宴席で、舞や芸事を披露する女性たちの職業。 そんな楽宮たちの住む喜花坊に、最近煌国の第一王子・央蓮がしきりに出入りしている。お気に入りの寵姫がいるのでは、という噂が、都ではまことしやかに囁かれていた。 そんな央蓮が訪れたのは彩琳という楽宮の元。彼女が噂の寵姫かと思いきや、実はふたりの間に色恋沙汰など一切なし。彼らは共通の仇・蘇司山の打倒を目論み、日々情報交換のために逢瀬を重ねていた。 楽宮にもかかわらず、歌も楽器も秀でた物がない彩琳。だがそんな彼女に、央蓮は“采配”の才を見出す。蘇司山転覆計画の重要な鍵として、彩琳もまたその才を磨いていく。 本作の魅力は、やはり煌びやかで華やかな中華ファンタジーの世界! 重ねて、主人公である楽宮・彩琳が“采配”の才に長けている、という点もあまり他にない作品のユニークポイントだろう。 歌も踊りも楽器も苦手な、戯女として致命的な欠点を背負う彩琳。だが観察眼に長け柔軟な考え方ができる彼女は、一言で言えば非常に聡明な女性だ。 そんな彼女だからこそできるのが、宴席のプロデュース! 確かに、腕のあるパフォーマーと、華やかなステージ演出や企画を行うプランナーの才能はまったく別物。そしてそれこそが、彼女の野望を叶える大きな武器となる。そんな展開も、読んでいてわくわくすること間違いなし。 宴席を取り仕切る責任者・席糾として功を上げ、第一王子・央蓮に役職へ取り立ててもらうことで、蘇司山に着せられた父の汚名を晴らそうとする彩琳。 ふたりの復讐劇は、どのような形で成されるのか? まだまだ始まったばかりの物語、この先の展開も非常に楽しみだ。 文=ネゴト / 曽我美なつめ