「なんで分かってくれんのや」凶器も目撃者も見つからない殺人事件 捜査の拠り所は不鮮明な“ドラレコ画像” 懲役16年の一審判決に被告が『控訴』
■「顕著な特徴の一致なし」 判決はドラレコ映像での『犯人像』立証を一蹴
裁判所は、犯人と山本被告の着衣などについても「顕著な特徴の一致があるとは言い切れない」。 つまり、捜査の『要』だったドラレコに映る『犯人像』を一蹴した。 このほか、検察立証の前提となる『犯人は現場住宅街の住民』説についても、弁護側の主張を認める形で「検察の主張は、基本的な部分で大きく破綻したものといえる」と判断。 さらに、被害者の平山さんとトラブルのあった人が山本被告以外にいたかどうかの警察の聞き込み捜査については「捜査が不徹底」と踏み込んだ。 検察立証の柱をいくつも否定した判決。いったい何が山本被告と犯人を結び付けたのか。『判断の分かれ目』は、トラブル相手だった隣人宅の「センサーライト」だった。
■判断の分かれ目となった「センサーライト」が示す犯人の行動
実は、ドラレコに映っていたのは、平山さんと犯人の姿だけではなかった。 現場周辺を映したドラレコ映像には、犯行までの約20分間に犯人と見られる人物が計3回登場する。そのうち2回は、いずれも犯人が現れる30秒ほど前に、山本被告宅の隣のセンサーライトが点灯している様子も映っていた。 検察は、このセンサーライトの点灯に着目し、山本被告の犯行は以下の経過をたどったと主張している。事件当日、山本被告は自宅前から、近くの駐車場に車を止めた平山さんを監視していた。 そして、平山さんが車を降りたタイミングで移動して、犯行に及んだ。 山本被告の家は、住宅街の袋小路の突き当りに位置していて、犯行現場に行くには隣の家の前を通らなければならなかった。 その際に隣家のセンサーライトが点灯したという説明だ。 もし山本被告以外の人が犯人ならば、平山さんを監視できる場所が他にあるにも関わらず、わざわざ他人の家の前で監視をするのは目立つし不自然である。 しかし、不自然でない人がいるとすれば、それはこの家に住む山本被告だけであると。 弁護側は、山本被告が犯人で犯行現場を行き来したとするなら、犯行後、帰宅する際にもセンサーライトが点灯するはずだが、映像で点灯は確認できず矛盾があると主張していた。 しかし、裁判所は、「駆け足で通れば点灯しないこともある」などと弁護側の指摘は当たらないとした。 「動機」についても、山本被告には隣に住む平山さんの交際相手と植木鉢をめぐるトラブルがあり、強い不満の矛先が当時、夫であると認識していた平山さんに向かっても不自然ではないと判断。 「被告人が犯人であると推認できる程度は相当に高い」として、山本被告に懲役16年の判決を言い渡したのだった(検察の求刑は懲役20年)。
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