バブルならではの「贅沢Z」! 280馬力規制のきっかけにもなったZ32型「フェアレディZ」のスリリングな世界
280馬力規制のきっかけにも
インテリアは先代Z31型とは別物の運転席、助手席が完全に分断されたスポーツカーコクピットとなり、高級感も一気にレベルアップ。 肝心のパワーユニットは、VG30DE型の3リッターV6(230馬力)、VG30DETT型の3リッターV6ツインターボ(280馬力)、39.6kg-mを5MT/4ATとともに搭載(先代Z31型のVG30ETはシングルターボで240馬力、34.0kg-m)。 注目すべきは、日本の自動車メーカーの日本向け仕様として初の280馬力を達成したのが、このZ32型フェアレディZ 300ZXだったということだ。じつは、北米仕様は300馬力であり、それも可能だったのだが、当時の運輸省の指導によって280馬力に抑えられたのだった。同時に、日本の自動車メーカーの280馬力自主規制もここから始まったことになる。 Zフリーク(S130時代に280Z Tバールーフを所有)でもあった筆者も仕事でZ32 ツインターボに何度となく試乗したものだが、ズバリ、ツインターボパワーはいわゆる「ドッカンターボ」であり、アクセルを踏み始めたときのレスポンスは、ちょっとタメたあと、バキューンと強烈な加速を開始するタイプだった。派手に加速するとリヤタイヤのグリップが失われるほどのスリリングな体験を何度かしたことがある(怖!!)。 しかし、意外にも乗り心地はよく、なるほど、この世代は北米でウケそうなスポーツカーとグランドツーリングカーの中間的走りのキャラクターのもち主でもあったようだ。 細かい点では、イグニッションキーはチタン製、ジャッキはアルミ製。4輪のホイールはもちろん、スペアタイヤまでアルミ製という贅沢さもバブル期の新型車ならではと言えるだろう。 そしてTバールーフに加え、1992年8月の一部改良時に、2シーターモデルのみにフェアレディ初のコンバーチブルを追加(1998年10月の一部改良時まで)。1994年の一部改良では全車にバージョンSを追加するとともに、レカロシートやBBS鍛造アルミホイールなどを奢ったバージョンSレカロを設定。ただし、ターボのブースト計やアルミ製ブレーキキャリパー、チタン製キーは廃止。これもバブル崩壊の影響だろうか……。 そんなフェアレディZを大革新したZ32型フェアレディZ 300Xは、バブルの終焉とともにミレニアムの2000年9月に販売終了。あろうことか、フェアレディZの歴史はここでいったん途絶えることになる(泣)。 そして2002年、現代的なフェアレディZ第1弾といっていいZ33型が登場し、6代目Z34型(2008年~2021年)、その改良版、初代S30型のアイデンティティを強く継承したの6代目(2022年~)へと、フェアレディZの系譜は再びつながっていくことになる(祝)。※4シーターはスカイラインクーペにお任せとなる。 なお、Z32型フェアレディZの中古車は、海外に多くが流れていったのだろうか、国内ではかなり台数が限られる。ただし価格は200~350万円と、ネオクラシックカーとしてはそれほど高騰していないのが幸いだ。
青山尚暉