原発再稼働推進の岸田路線は継承へ、経済界に追い風-自民党総裁選
(ブルームバーグ): 自民党総裁選ではエネルギー政策を巡り、各候補が原子力発電所の再稼働などの利活用を進めることで一致している。東京電力福島第一原発事故の後始末が続く中でも、増大する電力需要が同党内の慎重論を後退させた形だ。
総裁選では、「脱原発」を主張していた河野太郎デジタル相が原発の「リプレース(建て替え)も選択肢」と方針転換。一時、「原発ゼロ」に言及した石破茂元幹事長も政策集では「安全を大前提とした利活用」と明記し、軌道修正した。小泉進次郎元環境相は脱炭素電源の一つとして容認する姿勢を示している。高市早苗経済安全保障担当相は以前から原発推進派だ。
一連の発言は原発推進に舵(かじ)を切った岸田文雄政権の政策を継承するもので、電力不足への懸念から原発の利活用を求めてきた経済界には追い風だ。ただ、原発の立地地域やその周辺では安全性への懸念から再稼働に反対する声も根強く、次期政権は地元の理解を丁寧に求めていく必要がある。
米戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアフェロー(エネルギー安全保障・気候変動)、ジェーン・ナカノ氏は、次の日本の首相がエネルギーと脱炭素に向けた政策を立案するに当たって、経済安全保障と競争力の確保が重要な要素となるとの見方を示した。
経団連は4月、産業基盤強化に向けた提言で、AI(人工知能)技術進展に伴うデータセンター整備の必要性に触れ「原子力の積極的な推進と最大限の活用が不可欠」と明記した。十倉雅和会長は9日の会見で、石破、小泉両氏と面会した際に、最も関心が高いのはエネルギー政策であり、「資源を持たない島国で再生エネルギーと並んで原子力は非常に大事だと伝えた」と明らかにした。
自民党では、原発の建て替えを求める議員連盟が総裁選の候補者全員にアンケートを行い、原子力政策への姿勢を回答するよう求めている。
議連会長の稲田朋美幹事長代理は、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立は将来の産業競争力の鍵となるが、9人が立候補をした総裁選では、同テーマを深掘りする機会が得られていないと述べた。総裁選候補者からの回答は回収できたアンケートから順に交流サイト(SNS)などで公開をする予定だ。