濡れた芝生にヒヤリ続出。隙を許さぬ緊迫の土曜をトヨタのオジエが逆転リード【第12戦デイ3】
10月19日(土)、チェコ、ドイツ、オーストリアを舞台とする2024年WRC第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリーのデイ3が行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合首位に立っている。日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、総合5番手で大会3日目を終えた。 シリーズ唯一、中央ヨーロッパの3カ国を跨いで開催されている今大会は、第4戦クロアチア・ラリー以来のターマック(舗装路)ラウンドとなっている。しかし、ここまでの天候状況は霧がかかる小雨となり、路面コンディションも滑りやすく難しい状況での戦いが続いている。 ■一瞬のミスで首位陥落 迎えたデイ3も、昨日に似た霧の広がる天候が続き、路面はさらに滑りやすいコンディションとなっていた。この日行われるスペシャルステージ(SS)はSS9からSS14の計6ステージで、6本の総距離は123.46kmだ。 デイ3開幕時点での総合順位状況は、暫定総合首位にティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)、6.4秒差でオジエ、その1.4秒後方にはオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)がつけるトップ3だ。さらに7.3秒差でエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)、23.5秒差で勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)が続いている。 この日1本目のSS9『グラニット・ウント・ヴァルド1』(20.05km)は、現地時間7時58分より開始。昨日よりもさらに濃い霧が降りるなか、デイリタイアから復帰したアンドレアス・ミケルセン(ヒョンデi20 Nラリー1)からアタックを開始した。 路面サーフェスや路肩の芝は雨に濡れており、さらに霧で見通しも悪いなかでの全開走行が強いられる。この難コンディションに、若干芝に乗り上げたミケルセンやアドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)らが相次いでスピンを喫するなど、荒れた幕開けに緊張感が増していった。 そんななか、1本目からタナクが見事なマシンコントロールを見せ、この日最初のステージウインを飾った。その結果、ヌービルと0.8秒差の総合2番手に浮上し、さらにオジエとエバンスも上位に並んだことで総合トップ4の差が一段と縮まってくる。 しかし総合5番手の勝田は、ステージで一定区間内(200m)のどこかで時速60キロまでの減速が求められるバーチャルシケインにおいて、時速8キロの減速不足となってしまい16秒のタイムペナルティを課されてしまった。 続くSS10は、このセントラル・ヨーロピアン・ラリーらしい国境をまたぐ『ビヨンド・ボーダーズ1』(24.33km)。このステージは、ドイツからオーストリアへと国境を越える道のりで、路面としては細かな凸凹が増える。濡れた箇所や舗装面の変わる箇所など、グリップ変化の多いなかで加減速や操舵に新たな対応が求められるであろう一本だ。 ここでは、フルモーがふたたびコースアウトを喫し、オーバーステアから路肩に尻餅をついた結果リヤ周りを中破。何とかステージ自体は走破したものの、最終的にはこの破損が理由でデイリタイアとなってしまった。 そんななか、表彰台圏内進出を狙うエバンスがトップタイムを刻む好走を披露。チームメイトのオジエも2番手タイムで続き、総合でも2番手に浮上する。難コンディションにもかかわらず、トヨタとヒョンデのマニュファクチャラー争いも含めた上位の戦いは熾烈を極め始めた。 午前最後のSS11『シェルディンガー・インファテル1』(17.35km)は、国境を跨いだ先のオーストリアが舞台だ。 先ほどよりも視界は良くなってきたが、逆に特徴の変化した路面は滑りやすさは増した様子。6番目出走の勝田は、中低速コーナーにてインカットで撒かれた泥に乗った際、無理な反応を避けて芝生に大きくコースオフしてしまう。10秒ほどタイムをロスしたものの、一帯の芝を大回りして安全にコースに戻り無事完走となった。 こうして緊張感の高い争いが続くなか、総合首位のヌービルもスピンを喫し、約10秒のロス。その後も、汚れたタイヤで滑ったのかオーバーランを喫し、Uターンしてコースに戻る際にはバンクに若干スタックするなど、一瞬デイリタイヤもよぎるヒヤリの瞬間となったが、35.8秒遅れの11番手で完走を果たした。 相当の集中力が要求されたこのSS11では、オジエ、タナク、エバンスというトップ3となり、オジエが総合首位に浮上した。一方のヌービルは総合4番手にダウンする番狂わせで、デイ3は折り返しを迎える。 ■オジエとタナクの主導権争いがヒートアップ サービスパークでのミッドデイサービスを挟み、午後のステージは現地14時28分からスタート。午前にダメージを負ったフルモーはデイリタイアを選択し、最高峰クラスは9台がSS12に集まった。 舞台となるSS12『グラニット・ウント・ヴァルド2』(20.05km)は、午前一本目のループステージとなるが、天候は霧が晴れ、気温も17度まで上昇。徐々にドライ路面も増えてきたなかでの戦いとなった。 各車は午前ループでのインフォメーションも参考にして続々と自己ベストを更新し、結果的にはSS9と同じくタナクがステージウイン。オジエとエバンスが同タイムで2番手に続いた。 しかし、SS12で午後の路面の汚れ具合を把握したオジエは、続く国境越えのSS13『ビヨンド・ボーダーズ2』(24.33km)で反転攻勢に出るアタックを敢行する。暫定ポイントが決まる土曜午後の緊迫を断ち切るステージウインで応酬し、4.1秒にリードを広げた。2番手タイムにはヌービルが続き、こちらもロスを取り戻そうと力強くステージを駆け抜ける。 この日最後のSS14『シェルディンガー・インファテル2』(17.35km)では、タナクが逆転を望みに攻めの走りを披露したが、そのタイムを1.1秒上回ってオジエが連続のステージウイン。タイムで勝って総合首位をキープするという、難コンディションを力で制するラリーを見せた。 これで折り返しとなった大会3日目の走行は終了。土曜日時点の暫定順位に従って、トップのオジエが18ポイント、2番手のタナクが15ポイント、3番手のエバンスが13ポイントを獲得、以下10番手までが暫定ポイントを手にした。こちらは最終日までの完走が獲得条件となる。 そしてWRC2クラスは、ニコライ・グリアジン(シトロエンC3ラリー2)が依然クラス首位をキープ。賞典内のクラス2番手にはフィリップ・マレス(トヨタGRヤリス・ラリー2)、3番手にはミコ・マルツィク(シュコダ・ファビアRSラリー2)がつけるトップ3となり、デイ2と同じ状況で大会は最終日に突入する。さらに、今回は有効ポイント外のエントリーとなっているオリバー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRSラリー2)は、この日SS11から14まで4本連続でクラストップタイムを刻む速さを披露。総合順位では、グリアジンと31.0秒差の総合9番手につけている。 いよいよ総合優勝の決まる大会最終日20日(日)は、SS15からSS18までの計4ステージが行われる。4本のステージ総距離は54.08km、リエゾン(公道区間)もふくめた1日の総走行距離は344.60kmだ。 [オートスポーツweb 2024年10月20日]