レインボーシックス シージ世界大会は、eスポーツを価値あるビジネスへと昇華したのか
eスポーツ収益の状況
「レインボーシックス」のeスポーツシーンに活気があるのは、ユービーアイソフトが長い間携わってきたeスポーツのエコシステムへの取り組みが評価されたこともその理由に挙げられる。その特徴は昇格・降格の入れ替え制度で、勝者への金銭的インセンティブも伴う。 たとえば2018年以来、同社は収益分配制を敷いており、ゲームに組み込まれているブランド商品の売上の一部をeスポーツ参加チームに提供している。これに対して、ライアットゲームズ(Riot Games)のような大手eスポーツデベロッパーは2024年に入り、ようやく収益分配を導入した始めたばかりだ。 「ゲーム自体にしても、チームの存在感にしても、非常に満足している」とチーム・リキッド(Team Liquid)でeスポーツ担当シニアディレクターのジョン・ルイス氏は話す。「モデルとすべきシステムで、eスポーツで何か構築したいと考えているパブリッシャーがいるなら、『知ってますか? これはユービーアイソフトが構築したシステムですが、実に正攻法ですよ』と本気で伝えたい」。 参加チームの収益分配額はゲーム内売上によって違うが、「R6S」のeスポーツ団体M80のCEOマルコ・メレウ氏の話では、人気チームの場合、20万ドル、30万ドルあたりから100万ドル程度(約3000万円~約1億5000万円)が相場だという。 「チームを成功させる能力があり、ファン層もしっかりしていれば、スキンの販売で得られる収益は極めて大きい」とメレウ氏。「これはeスポーツにおける秀逸なモデルだと確信しているし、これまでの実績や今後の方針に基づき、収益として何が期待できるのかがかなりはっきりとわかるようになる」。
eスポーツエコシステムの再構築
ユービーアイソフトは、eスポーツ団体に対して、同社のエコシステムに参加するために何百万ドル(数億円)という巨額なフランチャイズ料金の請求を自粛したが、巨額の請求が間違いであることは、オーバーウォッチ・リーグ(Overwatch League)の崩壊や、同リーグを所有するアクティビジョン・ブリザードに対するチームオーナーの訴訟を見れば明らかだ。 長らくeスポーツに注目し、業界の事情に詳しいアナリストのスコット・スミス氏は、「ユービーアイソフトは、『500万ドル(約7億5000万円)を払えば仲間になれるよ』といった類のおいしい話をちらつかせなかった」と説明する。 その一方で、「レインボーシックス」の復活は、ブラストの契約の一環としてユービーアイソフトが行った変化の産物でもある。通常のベンダー/クライアントのアプローチを取らず、両社の代表は、制作コストを具体的にどのように折半したのか明言していないものの、eスポーツ「レインボーシックス」が、パートナー企業双方とも多大な資金を提供し、協働で作りあげたものであることは明確にした。 「レインボーシックス」は2社が共同制作したeスポーツであるので、両社ともこの事業に今後長期にわたり積極的にかかわる可能性が高い。ユービーアイソフトの場合、中核となるゲーミング製品の売り込みが主たる目標だ。しかし、eスポーツシーンを活気のあるものとして維持することも、その目標の達成に付随する重要な目標である。 一方、ブラストの場合、活気があり、効果的に収益を見込めるeスポーツシーンの構築が主たる目標だが、これはユービーアイソフトのような満足のいくパブリッシャーと組むことができなければ決して達成できない。 「ベンダー/クライアントの関係ではない」と話すのは、ユービーアイソフトで北米eスポーツ担当アソシエイトディレクターを務めるジェイムス・シルクレット氏だ。「ブラストも『レインボーシックス』に投資して、我々も投資している。『レインボーシックス』にしてみれば、最高のeスポーツ環境が整っている」。