キヤノンITS社長が説く「SIからサービス提供への事業モデル転換」は奏功するか
「生成AI活用でのAWSの強みはAWSサービス内の閉じた仕組みでやれることだ」(AWSジャパン サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長の小林正人氏) 米Amazon Web Services(AWS)の日本法人アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は先頃、生成AIに関する取り組みについて記者説明会を開いた。小林氏の冒頭の発言はその会見の質疑応答で、生成AI活用でのAWSの強みを問われて答えたものである。 会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは小林氏の冒頭の発言に注目したい。 まずは、小林氏が説明に使った図の中から、2点を取り上げる。 1つは、同氏が「今回の説明会の内容についてポイントを3つ挙げる」として、最初に示した図3だ。 「セキュアなAI活用の推進」「選択肢の提供」「日本国内のAI開発・活用を幅広く支援」の3つだが、これらはまさしくAWSにおける生成AIの取り組みのポイントそのものと言っていい。 もう1つは、AWSの生成AI関連サービスの分類を示した図4だ。 下から、「モデルの学習と推論のためのインフラストラクチャ」「モデルを活用しアプリケーションを開発するためのツール」「モデルを活用するアプリケーション」と、すなわち「インフラストラクチャ」「アプリケーション開発」「アプリケーション利用」の3層構造からなる。 その上で、小林氏は生成AI活用でのAWSの強みについて、「これらの生成AIの活用をAWSサービス内の閉じた仕組みでやれることだ。それによって、セキュアなAI活用を推進でき、テクノロジーの選択肢も幅広く、AIの開発や活用を幅広く支援することができる。しかもAI活用に不可欠なデータもAWSサービス内で安全に管理でき、AIのカスタマイズニーズにも柔軟に対応することができる」と説明した。 冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。 ただ、ユーザー視点に立って筆者が気になったのは、いわゆる「AIガバナンス」の問題だ。多くの企業において、今は生成AIをどう活用するかというところに目が行っているが、そのうちにさまざまな生成AIが社内に混在し、データの活用も含めて収拾がつかなくなる可能性が高い。小林氏が言うように、それが全てAWSサービス上で動いているのならばAIガバナンスを効かせることもできるだろうが、現実的には多くの企業がハイブリッドクラウド環境であり、マルチクラウドの形で利用している。 AWSはこうした生成AIの異種混在環境においてガバナンスを効かせるようなサービスを用意する考えはあるのだろうか。クラウド基盤としてのAWSの影響力が大きいだけに気になるところだ。 会見では質問する機会を得られなかったので、公開質問として記しておきたい。ただ、AIガバナンスについてはAWSに限らず、生成AIをはじめとしたAIサービスを提供する全てのベンダー、とりわけITサービスベンダーに問いたい。ガバナンスというと大企業だけの話に捉えられがちだが、これは企業規模を問わない課題ではないか。ユーザーサイドもそうした問題意識を持ちたいところである。