それはまるで『キングダム』!?伊沢拓司が語るトッテナムのほっとけない魅力【来日記念インタビュー前編】
ポチェッティーノ政権でハマれたという幸運
――ワールドカップ、ウイニングイレブン、浦和レッズ……そうした時期を経て、トッテナムとの出会いはいつだったのですか? 「高2、高3あたりが芽生えでしょうか。受験生時代は勉強から逃げたいという気持ちで、ゲーセンに行ってお金と時間を潰していまして(笑)。そこでウイイレで現実逃避するわけですが、最初はなんとなくクレストがかっこいいという理由でトッテナムを選んでいたんです。しかも、当時のトッテナムはすごく使いやすかった。ベイル、レノンというサッカーゲームでは重宝する足の速い両翼がいましたから。モドリッチとベイルが相次いでレアル・マドリーに移籍していく転換期でしたけど、ウイイレをきっかけにチームのことを知り始めました。 当時の僕にとってイングランドフットボールというと、2000年代前半の印象が色濃く残っていて、“ベッカムとイカツイ男たち”というイメージだったんです。そんな中でトッテナムのスピードを生かした攻撃的なスタイルにはシンプルに興味が湧いてきて、大学生になってから本格的に情報を追うようになった感じですね」 ――では、同じ頃にTVで試合中継も見始めている? 「ちょっとあとですね。当時トッテナムの試合は見づらかったんです。今でこそプレミアリーグは全試合生中継で観戦できますが、その頃はJ SPORTSの中継枠に選ばれるにしてもビッグクラブと対戦する時だけ。なのでちゃんと見始めたのは2015-16シーズン、岡崎慎司選手がいたミラクル・レスターのシーズンなんですよ。レスター戦も中継されるようになって、NHKでもレスター対トッテナムが放送されたり、徐々に見やすくなってきて」 ――“ビッグ4”から“ビッグ6”へ、トッテナムが強豪の仲間入りを果たしていく時期ですね。 「例えばフジテレビの『MONDAY FOOTBALL』では順位表がちょっと紹介されるんですけど、いつも5位、6位あたりにいるって感じでしたよね。2010-11シーズンに初めてCL(チャンピオンズリーグ)に出場した後も、なかなかアップダウンの激しいチームでしたので、固定のファンがつきにくかったと思うんです。だから昔からのスパーズサポーターというと、海外在住経験があったり、イギリスの文化に触れたりといった背景のある方が多いんです。そうした日本だとなかなかファンを獲得しづらい状況で、たまたま僕はタイミングが合って、ケインが伸びてきた、デレ・アリが出てきた、そういう素晴らしい時期を捕まえられたのは幸運でしたよね」 ――2014年夏のマウリシオ・ポチェッティーノ監督就任が転機となりました。 「ポチェッティーノ政権でハマれたというのは僕にとって本当に大きかった。ワンチャンあるサッカーというか、強豪も倒せるし、一方でどんな弱いチームにも負けるっていう。その強さと脆さが共存している感じが、毎試合見なきゃって気持ちにさせるんです。当時から滅法マンチェスター・シティには強かったわけですし、マンチェスター・ユナイテッド相手にもよくアップセットを起こしたり、でも一方で、アーセナルとチェルシーには勝ちきれなかったり、そういうのが面白くて。 ケイン、デレ、エリクセン、そしてソン・フンミンが出てきた頃で、攻撃陣がすごく魅力的なチームでしたから。今では考えられないですけど、ソンは当時“シュートだけうまい選手”って言われていたんですよね。後方はアルデルワイレルトとフェルトンゲンの両センターバックが固めていて、本格的に見始めた頃にダビンソン・サンチェスや、EURO2016で大活躍したフランス代表のムサ・シソコが移籍してきて。EURO2016はめちゃくちゃ見ていたので、“うわっ、あんないい選手が来るんだ”って喜んだ記憶があります。結局そのシーズンのシスコはめちゃくちゃ苦しむんですけど」