EV、リチウムイオン電池、太陽光パネル…「過剰生産問題」を非難する先進国に中国が“開き直り”を決め込む「4つの理由」
1)中国の経済危機
中国経済が悪化の一途を辿っていて、他国を顧みたり、譲歩したりする余裕がないということだ。自慢のEVについても、今年に入って値崩れが起こっていて、黒字なのは最大手のBYD(比亜迪)くらいのものだ。 だが何と言っても最悪なのは、これまでGDPの約3割を占めてきた不動産業界だ。不動産業界が「悪夢の状況」であることは、次の国家統計局発表の最新統計(6月9日現在)から推測できる。 ---------- 〇1~4月の全国不動産開発投資は-9.8%。うち住宅投資は-10.5% 〇1~4月の不動産開発企業家屋施行面積は-10.8%。うち住宅施行面積は-11.4% 〇1~4月の不動産開発企業家屋新規工事開始面積は-24.6%。うち住宅新規工事開始面積は-25.6% 〇1~4月の商品家屋販売面積は-20.2%。うち住宅販売面積は-23.8% 〇1~4月の商品家屋販売額は-28.3%。うち住宅販売額は-31.1% 〇4月末の商品家屋売れ残り面積は+15.7%。住宅売れ残り面積は+24.5% 〇1~4月の不動産開発企業手元資金は-24.9%。うち国内融資-10.1%、外資-46.7%、自己資金-10.1% 〇4月の不動産開発景気指数は92.02で、過去一年で最悪 〇4月の70大中都市新築商品住宅販売価格は、前月比で+6都市、-64都市 〇4月の70大中都市中古住宅販売価格は、前月比で+1都市(昆明)、-69都市 ---------- こうした状況に対して、中国政府は5月17日、「奥の手」とも言える重量級の政策を発表した。その概略は、以下のようなものだ。 ---------- 〇販売契約を結んだマンションの建設と引き渡しを円滑に行う。 〇商業銀行は不動産への融資をしっかり行う。 〇地方の国有企業がマンション在庫の一部を買い取り、低所得者向け住居とする。 〇ゴーストタウンを政府が買い取って転売する。 ---------- これに付随して、中国人民銀行(中央銀行)は買い取りを支えるため、3000億元(約6.5兆円)の資金枠を設けた。かつ、住宅ローン金利の下限を撤廃した。 一見すると、不動産産業を何とかして活性化させようという中国政府の「本気度」が見て取れる。 前述のように、不動産産業は少し前まで、GDPの3割を占める中国経済の最大の牽引役だったのだ。それがいまや、大手の恒大グループは約50兆円の負債を抱え、同じく碧桂園グループは約30兆円の負債を抱え、それぞれ破綻への道まっしぐらである。こうした暗雲垂れ込める不動産業界を、金融機関と地方自治体とが一体となって支えていこうというわけだ。 だが、こうした大掛かりな対策を打てば打つほど、不動産不況に金融機関と地方自治体を深く巻き込んでいくことになる。それが功を奏せばよいが、逆に金融機関と地方自治体も破綻に追い込まれれば、まさに「中国版リーマンショック」の到来となる。それだけハイリターンだがハイリスクな政策なのだ。 いずれにしても、不動産不況という「中国経済のブラックホール」を、早く何とかしないといけない。そんな中国に、過剰生産を他国に非難されたからといって、それを慮(おもんぱか)っている余裕などないのだ。