EV、リチウムイオン電池、太陽光パネル…「過剰生産問題」を非難する先進国に中国が“開き直り”を決め込む「4つの理由」
習近平主席は開き直りの「ゼロ回答」
EUもまた、この中国の生産過剰を問題視している。EUにとって中国は最大の貿易相手国で、昨年の対中貿易赤字は2910億ユーロ(約49兆円)に達する。 5月6日、パリでエマニュエル・マクロン仏大統領を交えて、習近平主席と会談したEUのウルズラ・フォンデアライエン委員長は、習主席に対して直接、次のように不満をぶつけた。 「世界は、中国の過剰に生産された製品を吸収することはできない。中国政府に、構造的な過剰生産の問題に対処するよう促す。EUは、中国政府が補助金で価格を抑え、ヨーロッパ市場での競争をゆがめているとみて関税の上乗せなどを視野に調査を進めている。もしも公正にふるまう中国ならば、すべての当事者にとってよい存在だ。だが、ヨーロッパはみずからの経済や安全を守るためには、厳しい決断を下すこともためらわない」 EUは、先週末(6月7日~9日)の欧州議会選挙を経て、まもなく中国製EVなどに25%の関税を課すとも伝えられる。フォンデアライエン委員長に対して、習近平主席はこう答えている。 「中国の新エネルギー産業は、開放された競争の中で鍛え上げられて本領を発揮しているものだ。代表的なのは、先進的な生産能力だ。それは全世界に豊富に供給さいているばかりか、全世界のインフレ圧力を緩和している。また、全世界の地球温暖化への応対とグリーン転化に、多大な貢献をしている。比較優位の観点から見ても、全世界の市場の需要の観点から見ても、いわゆる『中国の過剰生産問題』は存在しない」 このように、開き直りの「ゼロ回答」だった。さらに、先週6月6日の中国外交部定例会見で、毛寧(もう・ねい)報道官がこの問題について、いつものように顔をこわばらせながらも、比較的丁寧に(? )、中国の立場を述べた。それらを箇条書きにすると、以下の通りだ。 ---------- ・EVを含む中国の新エネルギー製品は、国際市場で幅広く歓迎されている。 ・これは持続的な技術革新と完備したインダストリアルチェーンとサプライチェーンのシステム、十分な市場での競争によるものだ。つまりは、比較優位と市場の規律が互いに作用した結果だ。企業努力によるものであって、(中国)政府が保護してできたものではないのだ。 ・昨年、中国からアメリカに輸出したEVは1.3万台に過ぎず、アメリカ市場を席捲するなどと、どうして言えるのか? ・政府による産業補助政策は、もともと米欧が始めたものだ。それを世界各国が普遍的に採用するようになったのだ。 ・中国の産業補助政策は、WTO(世界貿易機関)の規則を、厳格に順守している。公平・透明・非差別の原則を終始堅持し、WTOが禁止している補助は存在しない。 ・アメリカは産業補助の「大国」で、最近も「チップス科学法」「インフレ抑制法」を成立させている。数千万ドルの直接・間接補助を通して、市場の資源配分に直接関与しているのだ。 ・産業補助は産業競争力を補うことはなく、保護主義が保護するのは、遅れをとった失っていく未来だ。 ・アメリカが中国のEVに対して行う差別的手法は、WTOの規則に違反し、全世界のインダストリアルチェーンとサプライチェーンの安定を破壊し、最終的にはアメリカ自身の利益を害するものだ。 ・中国はアメリカが、市場の原則と国際貿易の規則をしっかりと順守し、各国の企業に公平な競争という良好な環境を与えることを促す。 ・中国は自身の合法的な利益を維持、保護する措置を、決然と取っていく。 ---------- 以上である。こうして中国の言い分を並べてみると、確かに「一理ある」と思えることもある。 だが、それにしても、中国がかくも頑なな態度なのは、一体どうしてなのか? 私なりに縷々(るる)思いを巡らせてみると、4つの理由が浮かび上がってくる。以下、順に見ていこう。