麻布合格の受験勉強と子育てに役立ったのはMBA!発達障害をもち、生きづらさを抱える子の学習を支えた元テレビ東京アナ・赤平 大さんの極意とは
受験まで2カ月、仮説を立てて「差別化集中戦略」で合格へ
――受験にも戦略は使われましたか? 赤平さんの息子さんは毎日決まった時間に勉強をし、模試は受けていたものの、塾にも行かずに麻布の受験をされたとのことですが……。 【赤平】:そうなんです、圧倒的に時間が足りなかったのです。そこで、内田和成先生の「仮説思考」を使ってみました。「限られた情報、少ない時間でベストな解を出す方法」です。 もともと発達障害に手厚い私立中に行こうと準備していた中で、麻布に決めたのは受験まで残り2カ月の時点。中学受験をするつもりはなかったのでノウハウを知りませんし、麻布受験の知識もありません。まさに私たちの状況にピッタリです。そんなとき、内田先生の戦略を思い出し、少ない情報の中から仮説を立ててみました。 麻布の試験はどうやら深い思考が問われる記述が多いらしい。しかし息子は、発達検査で思考力が高IQなのに、模擬試験では記述の点数が取れていませんでした。そんな中、息子と話したり少ない解答情報の中から考察してみると、「答えがわからないから記述できないのではなく、答えはわかるけれど記述がうまくできないのでは?」という仮説が出てきたんです。 それならば、自分の考えを文字化することに勉強を集中させようと思いました。 使ったのはマイケル・ポーターの「差別化集中戦略」です。「攻めるフィールドを限定すること」「戦力を自分の強みのある部分に集中させること」。 そこで、たまたま家にあった『山川の日本史』の要約と、国語の過去問の記述式の問題だけを解くことに集中しました。 多くの方とのご縁やサポートのおかげで、結果的にたまたま息子は合格しましたが、MBAで学んだ戦略の効果もあったんじゃないかなと思っています。
発達障害の子の子育て、1万個の言い方を考え抜く
――赤平さんの著書には、MBAの戦略以外にも、発達障害の子の子育ての工夫がたくさん書いてあります。「忘れ物の対策にはクリアファイルやサイドバッグでやりやすく整理する」「口で何度も言うよりホワイトボードで見える化する」「食事をこぼしてイライラするのではなく、トレーの中ならこぼしてもOKとする」など、どんな子の子育てにも通じる知恵がいっぱいですね。 【赤平】:発達障害はひとりひとり違うので、再現性がきわめて乏しいです。同じアプローチをしても同じように育つわけではありません。だからトライアンドエラーばかりですが……。そんな中でもMBAの戦略をあてはめてみたり、1万個の言い方を考えて響く言葉を探したり、工夫はしています。 ■子どもにあやまることも大事。親子の関係は上下ではなく「人と人」 【赤平】:意識しているのは、親と子の関係を上下で考えないことですね。大人と子どもとでは情報に非対称性があり、つい親がマウントをとりたくなります。でも、親も間違ったことをするし、失敗もする。ビジネスの社会なら失敗をホウレンソウ(報告・連絡・相談)しますが、子どもとの関係だとそのままにしてしまう。 ――赤平さんは、そんなとき、お子さんにあやまったりされています。 【赤平】:必ずあやまります。そうしないと、「二度とお父さんの話は聞かない」となってもおかしくないですから。親子といえども「人対人」。その関係をぶらさないようにしたいです。何か意見をしたいときは、「そういうことをすると君にはこういうメリットとデメリットがあるよ」と冷静で対等な言い方をしようと心がけています。子どもを「個」としてとらえることが重要、それもMBAで教えてもらいましたし、今後にも生かしていきたいと思っています。