麻布合格の受験勉強と子育てに役立ったのはMBA!発達障害をもち、生きづらさを抱える子の学習を支えた元テレビ東京アナ・赤平 大さんの極意とは
子育てで「こうかな?」と思うことが実はMBAの学びで証明されていた
――そんな中で、MBAに出会い、子育てに生かしたのですか? 【赤平】:早稲田大学大学院にMBAの勉強に行っていたのは2015年頃、まだ子どもが5歳くらいのときでした。この頃はまだ息子が発達障害だと気づいていませんでしたし、子育てに使おうとは思っていませんでしたね。異なる世代・国籍の同級生は総じて信じられないくらい優秀で、凡庸な私は「赤平は大学に住んでいるのではないか」と言われるくらい朝から深夜まで大学にいて時間をかけて勉強しないとついていけませんでした。 ただ、学んでいると、「これまで自分が本能的にやっていたことは、世界中の有識者が提唱するMBAの戦略と似ている!」と腑に落ちるが多かったんです。自分のやってきたことが間違っていなかったのだと背中を押された感じがしました。同時に、MBAの学びを意識して使っていけば、日常生活にことごとく応用できるということに気がつきました。 たとえば、MBAで学ぶ定番のひとつ「上司になったら人に対してどうマネジメントするか」。これは、「子育てで子どもをマネジメントするのに似ているな」と。また、経営戦略の「今置かれている状況と課題をどう解決するか」も、結果的に中学受験でそのまま応用できました。 MBAでは、物事の考え方をロジカルに整理していきます。息子の子育てでは、なんとなくやるのではなく論理的に考えて伝えていったほうが納得してくれるし、結果も出やすいと感じました。 ■「ひとりの人間」として子どもを扱う 仕事でも子育てでも、自分なりに実践しているぼんやりとした手法は、実はMBAではすでに研究ずみだったことが多く、太鼓判を押してくれる気がしたんです。 ――それは心強いですね。 【赤平】:子育てをMBAの戦略に当てはめるときには、子どもを「うちの子」というより「ひとりの人」というふうに親子関係を外して抽象化します。すると「何度言ったらわかるんだ!」のような感情が先に立つのではなく、「この人」はどうしたらいいパフォーマンスになるか、幸せになるのかを考えるので、発達障害の特性に悩む親のストレスが少なくなる。一般的な子育てでも同様だと思います。 ■高IQの子には先取り学習と習い事、「両利きの経営」につながる ――実際にはどんな考え方をあてはめるのですか? 【赤平】:私はMBAの論文や発達障害に関する論文をおそらく500以上読みました。その上で息子のような高IQを併せ持つ2Eタイプの教育で重要なのは「早修(学校のカリキュラムで年齢以上の内容を勉強する先取り学習)」と「拡充(学校のカリキュラム以外で個の才能にあった学びを探し深める)」で、これは2E教育の第一人者である関西学院大学名誉教授の松村暢隆先生の論文で知り、実践してきました。 早修の点では、学校での集団学習がうまくいかないことを想定して家で先取り学習をさせ、拡充の点では、さまざまな習い事や体験をさせ、個性を伸ばしました。 この早修と拡充という考えに出会ったとき、MBAで学んだ「両利きの経営」と似ていると思ったのです。企業がイノベーションを起こすには「知の深化」と「知の探求」の掛け合わせが必要、と学んだのですが、これが早修と拡充に非常に似ていました。「両利きの経営」は世界中の多くの企業が実践しているとMBAで教わっていたので、息子の子育てを「早修と拡充」にする安心材料になりました。