授業参観で出た「吃音」、一番の友達の母親に「うちの子と話してる?」と聞かれて…「注文に時間がかかるカフェ」主催の奥村安莉沙さん
思うように言葉が出ない「吃音(きつおん)」に悩む若者が接客に挑戦する「注文に時間がかかるカフェ」を主催し、啓発(けいはつ)活動に取り組んでいる奥村安莉沙(ありさ)さん(32)。自らも小学生の頃から吃音に悩み、つらい思いも経験した。(読売中高生新聞編集室 大前勇)
「話し方がうつるから…」
「みなさんは『吃音』という障害を知っているでしょうか。成人の100人に1人が当てはまるとされていて、『わ、わ、わたし』というように最初の言葉が続いたりするなどいくつかの症状があります。周囲に該当する人がいたり、もしかしたら当事者として苦しんでいたりする方もいるかもしれません。私はもともとカフェの店員になるのが夢で、話すのが大好きな子どもでしたが、小学校2年生の秋に自分が吃音であることに気づきました。
きっかけは国語の授業参観でした。教科書の音読で、自分ではちゃんと読めているつもりだったのに、吃音がひどかったみたいです。授業が終わると、一番仲が良かった友だちのお母さんが私のところへ来て、『最近、うちの子と話してる』と聞きました。なぜそんなことを聞くのか不思議に思いましたが、『話しているよ』と答えました。それから3日後、友だちがすごくつらそうな表情で、『実は安莉沙ちゃんと遊べなくなったんだ』と切り出しました。どうやら、お母さんに『話し方がうつるから遊んじゃダメ』だと言われたようです」
その時期から吃音に関する、根も葉もない「うわさ」が学校内でどんどん独り歩きしていったという。
「私に近づいたり、触ったりすると吃音がうつるといううわさが広まり、周りに避けられるようになりました。混雑した廊下を歩いても、みんな潮が引くように私から離れていきました。最初は同じ言葉を何度も繰り返す『連発』という症状が主だったのですが、高学年になると言葉が出ずに間が空く『難発』という症状も表れ始めました。当たり前ですが、学校でほかの子と会話する機会は自然となくなっていきました。