授業参観で出た「吃音」、一番の友達の母親に「うちの子と話してる?」と聞かれて…「注文に時間がかかるカフェ」主催の奥村安莉沙さん
それでも、私に話しかけてくれる子もいました。『吃音がうつることなんてないらしいよ』。医療従事者だった親に聞いてきてくれたみたいで、私を励ましてくれました。そのときは、すごくうれしかったですね」
「たまたま学区の境(さかい)に住んでいたので、中学校では小学校時代の私を知らない同級生たちと一緒に学ぶことになりました。それまで嫌な思いをしてきたから、吃音であることは絶対にバレないようにしないといけないと思ってました。背が高かったこともあって、バスケットボール部に入りたいと考えていたのですが、団体競技なので練習や試合でとっさのコミュニケーションを取らなければならないため、泣く泣くあきらめました。
当時は、特に『あ行』がなかなか言えなくて、困っていました。だから、『奥村』も『安莉沙』もすぐに口から出てこない。自分の名前をまともに言うことができないのだから、周りも薄々変だと気づいていたはずです。
2年生の時に担任の先生が入院して、代理の若い女性の先生がクラスを受け持ったことがありました。みんなで自己紹介をすることになったのですが、私は名前が出てこない。やんちゃな子が多いクラスだったから、『早くしろよ』とヤジを飛ばされ、ノートの切れ端や消しゴムを背中に投げつけてくる子もいました。結局、私は名前が言えず、座り込んでしまいました。
そのときの、とても困惑した先生の表情を今も覚えています。『大人をこんなにも困らせてしまった』と考えると、ものすごく恥ずかしくて。吃音の悩みを打ち明けられる友人もなく、どうしたらいいのかまったくわからない時期でした」