丸山茂樹との出会いから始まったPGAツアーへの道 念願かなえた大西魁斗が渡米「行ってきます!」
今季、米国男子下部のコーンフェリー・ツアーで戦い、PGAツアーのツアーカードを手にした大西魁斗が28日、来シーズン2戦目「ソニー・オープン・イン・ハワイ」(1月9~12日、ハワイ・ワイアラエCC)のマンデートーナメント(予選会)に出場するため日本を飛び立った。 【写真】大西魁斗が念願のPGAツアーカード取得! 少し早めの渡米となったのは、1月16~19日に開催される「ザ・アメリカンエキスプレス」(カリフォルニア州、PGAウエスト ピート・ダイ スタジアムC)、その翌週の「ファーマーズ・インシュランス・オープン」(米カリフォルニア州、トリーパインズGC サウスC)の練習ラウンドを行うためだ。「アメックスの試合がコース3つ、次のトリーパインズもコースが2つあるので、先にやっておこうと思いまして」と一足先に飛び立ち、ソニー・オープンのマンデーまでゴルフ漬けの日々となる。 2年間戦ったコーンフェリー・ツアーについては「選手の気持ちが強い。『生きるか死ぬか』の世界で生きている。心の底から『来年はPGAツアーだ!』と強い気持ちを持っている人の集まりなので、その空間でプレーできたのは大きかった」と大きな刺激を受けた。 1年目は試合後に休息を優先していたが、「他の選手はジムに行っていた。それが、1打、2打(のスコア)や体力の面に影響があるんだと思って、今年は体重を増やしたり、トレーニングも試合中に行ったりなどしました」とゴルフに取り組む姿勢を大きく変えた。その成果が実り、6月の「UNCヘルス選手権」で下部ツアー初優勝を飾り、ポイントランキング25位でPGAツアーの切符をつかんだ。 「この2年は本当に辛かったですけど、それがなければ学べなかったことが多かった。それはとてもうれしいことですし、トップ選手がやっていることは自分もやらなきゃなって思いました」。いよいよ次の舞台は世界最高峰のPGAツアー。さらなる成長が期待される。 海外の舞台で本格的に戦うのは3年目。これまでは下部ツアーに向けての出発だったが、今回は違う。それでも「いつもと同じですね」と気負うことはない。「当然、成績を残したい。でも、それを考えても結果にはつながらないので、自分やるべきことに集中し、今年はできるだけ楽しんで回れたらなと思います」。舞台は変わっても、自分らしいゴルフを貫く姿勢だ。 大西がPGAツアーで戦いたいと思うようになったのは10歳のころだった。「丸山茂樹プロと一緒にラウンドをしたときでした。すごく印象が濃かったんです。上手さだけではなく、想像以上のプレーをする。『こういう人がPGAツアーに行くんだな…』と」。丸山は国内ツアーで10勝、米ツアーでは3勝を挙げて、2002、04年の「全米オープン」では優勝争いを繰り広げた名プレーヤー。その出会いが、大西の“PGAツアーへの道”を切り開いた。「当時は自分がそこに行けるなんて全く描けませんでした。本当にうれしいです」。 下部ツアーで戦った2年間で、改めて丸山のすごさを感じた。「“普通”ではできない。多分、(丸山の中で)自分がどのように成長して、どうやって優勝するのか。それ(に至るまでの道)が分かっていたんだと思う。本当に苦労はすると思いますが、どうにかして優勝、シードをキープする“何か”を見つけ出せたら」と話した。 憧れの丸山とは27日、恒例となった年末のラウンドをともに楽しんだ。この数年間、年の終わりに一緒に回らせていただいています。この時間があると『今年も12月を迎えたな…』ととてもいいイメージを持つことができています」。充実したゴルフ納めができた様子だった。 「一昨年、去年は1月からでしたが、今年はアメリカで年を越して、すぐに新シーズンを迎える。“あけましておめでとう”で、すぐに始まるので、このいいイメージを持ったまま試合モードに切り替えて行きたい。こういうのがすごく幸せです」と米ツアーならではの早い開幕を心から楽しみにしている。 大西のゴルフ人生の最大の目標は、「“世界一”を目指したいですし、PGAツアー、メジャー優勝も目標。だけど、それよりもキャリアの終わりに後悔がないようにしたい。そのために自分の本当にやりたいことをしていきたい」と話した。 そのために、まずは「再来年のシード権を獲得すること」が来季の目標。「その上で優勝できたら最高ですが、そこはあまり求めずに。シードを取る、取らないというのは、本当に1打差で決まる場合もある。目の前の一打一打に集中して、もったいないことをせず、来年のシード権を獲得してシグネチャーイベントに出たい」と強い眼差しで意気込んだ。 最後は「シグネチャーに出たら取材に来てくださいね! 行ってきます!」と笑顔で旅立った。日本男子ゴルフ界代表する一人として、世界に羽ばたいていく26歳。その活躍をこれからも追い続けて行きたい。(文・高木彩音)