「勉強しなさい!」は逆効果 自ら学ぶ子を育てる言葉とは
「勉強しなさい!」。子どもに一度もこう言ったことのない親は、超少数派だろう。叱りたくはないけれど、ほっておいたらスマホを見ているばかり。どうしたら、うちの子は言われなくても勉強するようになるのだろう―。 【写真】山本崇雄氏 そんな保護者の悩みに、「一番大切なのは、子どもからいかに手を放すかだ」とアドバイスするのが、「教えない授業」(※)の実践で注目されている横浜創英中学・高等学校の山本崇雄副校長。同氏の新著『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信社)から、自ら学ぶ自律した子どもを育むための、家庭でのコミュニケーションのコツを抜粋・編集して紹介する。 ※「教えない授業」 教師から一方的に知識を教えられるのではなく、子ども自身が自分で考え、学び方を主体的に選択する中で、自ら学ぶ力を育てる授業。 ◇自分自身をコントロールできているか ―子どものだらだらした生活態度を見ているとイライラして、思わず怒鳴りつけてしまいます。どうしたら怒鳴らない親になれるでしょうか? アンガーマネジメントをお勧めしています。やり方はいくつかあるようですが、よく聞くのが「怒りを感じたら6秒間やり過ごす」です。怒りを感じたら怒りをあらわにする前に6秒待つんです。完全に怒りが収まるわけではありませんが、ちょっとは落ち着きます。 その上で、子どもの態度が気になる時などには、親の思いを伝えることがあってもいいと思います。だた、その時は、「~しなさい」という命令形でなく、「私は~と思う」「私だったら~するけど、どう思う?」といった形で必ず主語を「私」にして話してください。これは「アイ・メッセージ」といって相手を非難することなく思いを伝える手法です。 ―「勉強しなさい」って言うのは、やっぱり子どものやる気をそぐのでしょうか? そうですね。親が「勉強しなさい」と言うのをやめるだけで、子どもはずいぶん気が楽になるものですよ。 子どもが勉強している姿を見ると親は安心すると思いますが、一斉に出される宿題などの場合「やらされる勉強」なので、僕としては取り組んでいてもあまり意味がないと思います。子どもの中で「宿題を提出すること」が目的になっていたら、解答の丸写しをしてしまうかもしれません。学びの本来の目的は、目標に向けて「できていないこと」を「できるようにする」ことです。その本来の目的を見失っていることになります。 「勉強しなさい」と言われてする勉強もこれと同じではないでしょうか。勉強している姿を親に見せることが目的になったら、親が近くに来た時だけ勉強したふりをしたりするようになります。 大切なのは、学びの本来の目的に向かって、子どもが自分自身をコントロールできているか、「自分で考えて、自分で決めること」ができているかどうかです。