「勉強しなさい!」は逆効果 自ら学ぶ子を育てる言葉とは
自律を見極める三つの言葉
―それはどうやって見極めるんですか? 「自分で考えて、自分で決めること」ができている状態を、僕は「自律型学習者」と呼んでいます。自律型学習者になるには、(1)目標を自分で決めること(目標設定)(2)自分の今の力を知ること(メタ認知)(3)学習の方法を自分で決めること(学習方略)―の三つが重要です。 子どもとの会話の中で、「どうしたいの?」(目標設定のための支援)、「(目標に対して)今どんな状況?」(メタ認知のための支援)、「私にできることはある?」(学習方略を自分で決めるための支援)などと問い掛け、子どもの状態を見極めてください。そうした会話の中で、子どもからアドバイスを求められたら、「~しなさい」ではなく「私は~と思うよ」などとアイ・メッセージで伝えましょう。 ―子どものために、あとは信じて見守るしかないのでしょうか。 「~しなさい」と指示を出してくれる人が生涯、子どものそばにいるわけではありません。指示がなくても「自分で考えて、自分で決めること」ができるようにならなければ、主体性のない指示待ち人間になってしまいます。自分で考えることを促し、自分で判断し、動く経験を繰り返すことが大切です。 もちろん間違った違った判断や行動をしてしまうことも多いと思います。でも、子どもの失敗は、大人がカバーできる範囲であることがほとんどです。うまくいかないことがあっても、「いい経験になったね。どんな失敗をしても家族は味方だからね」と温かく見守る環境を整えながら、少しずつ子どもを自律させましょう。 山本 崇雄(やまもと・たかお) 横浜創英中学・高等学校副校長。日本パブリックリレーションズ学会理事長。都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校および団体· 企業でも活動。Apple Distinguished Educator、LEGO®SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテータ。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。教育改革や子どもの自律などをテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)、『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)等、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。最新刊『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信社)は、「教えない授業」の実践を踏まえ、これからの子どもに必要な力を学校と家庭でどう育むかを、物語形式で分かりやすく解説する。