ベティアの戦略: ショッパブル動画 とスタイリストでラグジュアリーeコマースを再定義する
ショッパブル動画技術とマーケットプレイスモデル
ベティアはマーケットプレイスモデルで運営されており、アプリ内販売では手数料が発生する。そのショッパブル動画技術は現在特許出願中だが、ブランドパートナーらはまもなくライセンスベースでその技術を自社チャンネルに導入できるようになる。 デイビッドソン氏とチームは、その機能がスタイリストやインフルエンサーが2分でショッパブル動画を作成して公開できるほど直観的だと判断できるまで、アプリのソフトローンチを延期したという。「セレブリティやインフルエンサーが主導する動画コンテンツには大きなチャンスがある」と同氏はいう。 デイビッドソン氏のファッション業界での経歴には、高級リテーラーのルイーザヴィアローマ(Luisaviaroma)での最高開発責任者の役職、エル(Elle)とハーパーズバザー(Harper's Bazaar)でのアクセサリー編集者などがある。彼女はまた、パーソナルスタイリングサービスを提供するeコマースプラットフォームのエディトリアリスト(Editorialist)を2012年に共同設立している。 デイビッドソン氏は次のように語る。「ファッションはもっとも断片化された業界だ。パーソナルショッパーという非常に強力なグループが出現して、信じられないほどの量の商品を動かしている。なぜなら、パーソナルショッパーと協力することは購入客にとってずっと効率的だからだ」。 「また、実店舗とeコマースがあるが、雰囲気は異なっている。ベティアを使うことによって、すべてをひとつのスマートな環境に同期したいと考えている」と話す。
デジタルクローゼットでファッションの新時代を切り拓く
デイビッドソン氏によると、ベティアに掲載されている動画の多くはブランドがほかのプラットフォームに投稿しているものと同じだが、ショッパブルになっているという。また、ブランドの新発売スタイルを顧客に紹介するために、スタイリスト兼ストアアソシエイトが作成した動画もいくつかある。 現在、このアプリは主にスタイリストのツールとして機能している。100万ドル(約1億5700万円)から200万ドル(約3億1300万円)の予算のあるパーソナルショッパーで、ベティアに推薦された人たちが、自分たちの顧客とともにべティアに参加するように招待されている。 デイビッドソン氏によると、まもなく数名の有名スタイリストの参加を発表する予定だという。 デイビッドソン氏とチームはスタイリストとその顧客へのアクセス提供を優先している。また、それに該当しない約500人の個人客が許可され参加している。8月1日にアプリの制限が解除されると、ウェイティングリストに載っている4000人の購入客にアプリへのアクセスが許可されることになる。 長年にわたり、多くのテクノロジー企業が(1995年の映画)『クルーレス(原題:Clueless)』スタイルのデジタルクローゼットを軌道に乗せようと試みてきた。ベティアはワードローブ内のアイテムの写真撮影を行うことができる優秀なコンシェルジュチームを提供しており、これにより補完的なアイテムをベティア上で簡単に購入できるようにしている。 ユーザーは自分が持っているスタイルをGoogle画像検索からこのアプリに取り込むことも可能だ。取り込みプロセスは、ベティアのテクノロジーを使ってユーザーのEメールをスクレイピングしeコマース購入の領収書を取得して、自動化することもできる。 デイビッドソン氏によると、ベティアにはインド、ニューヨーク、南フロリダを拠点とする社員チームが発展しつつあり、加えてフリーランサーも数名抱えているという。同社はシードラウンドとシリーズA資金調達ラウンドで資金を調達しており、2025年の第1四半期までに損益分岐点に達する軌道に乗っている。 デイビッドソン氏は、8月のベティアの正式リリースのタイミングは意図的にニューヨークファッションウィークの直前に設定されたと語る。同社はイベントの一部のランウェイアイテムやほかの製品ををベティア経由で購入できるようにする予定である。 「顧客の上位2%に対応する際には、体験とアクセスの要素は非常に重要だ」とデイビッドソン氏は言う。 現在、ベティアの販売は主にチャットチャネルを通して行われている。デイビッドソン氏によると、平均注文額は約1400ドル(約22万円)、コンバージョン率は4.02だという。 「eコマースは15年前にすべてを変えた。ファッション体験の大部分と、人がインスピレーションを感じた瞬間を活用する能力が失われてしまった。動画がそのような要素を再び(ファッション体験に)加えてくれることを願っている」。 今後、ベティアはメンズ製品と美容製品を発売する予定だ。さらに、需要に応じて、近いうちにほかのユーザーのクローゼットの中身と同じものを購入できる機能を提供する可能性もある。デイビッドソン氏は、ベティア限定製品の提供も目指していると述べた。