マスク氏の「スターリンク」巡り闇市場も-不正利用が安全保障脅かす
(ブルームバーグ): 資産家イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発企業スペースXの「スターリンク」は、「地球上のほとんどどこでも利用できる」というのがうたい文句だ。
実際、人工衛星を介して提供されるこの高速インターネットサービスの利用は、強権的な政権に支配された地域を含め、スペースXと取り決めを結んでいない国々にも広がっている。
ブルームバーグ・ニュースは、スターリンクのキットが違法に取引・利用されている例が広範囲に及んでいることを調査で確認した。
こうしたキットが密輸され、闇市場で大量に出回っていることは、スターリンクの不正利用がグローバルかつシステミックな問題であることを裏付けており、国家安全保障に関わるシステムを運用するスペースXの管理体制に疑問を投げかけている。
約10年続く内戦の渦中にあるイエメンでは、政府の当局者がスターリンクが広く使われていると認めた。
欧米の外交官によれば、1年にわたる内戦で大量虐殺や人道に対する罪が告発され、何百万人もの人々が住む家を失ったスーダンでは通常のインターネットが数カ月不通で、準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の兵士らは兵たんのためスターリンクを利用しているという。
キャンベラにある独立系シンクタンク、オーストラリア研究所のエマ・ショーティス上級研究員(国際・安全保障問題担当)はスターリンクについて、「規制されず、民間企業が主導していることは非常に問題だ。誰がアクセスし、どのように使用されているのか、説明責任を欠いている」と語った。
スターリンクは、スペースXが2019年に展開し始めた衛星約5500基のネットワークからブロードバンドインターネットを提供する。
すでに約260万の顧客を持つスターリンクは、スペースXにとって大きな稼ぎ頭になる可能性を秘めている。火星探査というマスク氏の夢を実現する手段としてスタートしたスペースXは、今では米政府が進める宇宙計画の最も重要な民間請負会社で、国家の安全保障分野において圧倒的な存在感を示している。