ついに“復権”に動き出した「岸田前首相」 立て続けに「石破総理」と面会、主要ポストは「旧宏池会」が奪い、党内には“再登板”の声も
再登板の臆測も
これらを背景に、一大事があれば岸田氏が首相として「再登板」するとの臆測すら呼んでいる。とりわけ来夏には参院選を控える。石破首相が参院選勝利に向けて全力を挙げる方針であるのは論をまたないが、仮に来春の予算成立後に内閣支持率が低迷していれば、参院選を乗り切れないとの観測が強まる可能性も否定はできない。その場合、主流派が政権を引き継ぐとしたなら、林氏らに加え岸田氏の名も取り沙汰されるというわけだ。 軽武装・経済重視の流れをくむ旧宏池会に属した岸田氏は、党内ハト派の系譜に連なる。これに対し、石破氏は旧防衛庁長官や防衛相などを歴任し、軍事や安全保障に通じた改憲論者として地歩を固めてきた。党務や政策では長らく接点の少ない道を歩んできた一方、両氏は同い年であり、ともに国会議員経験者を父に持つ。大学卒業後に銀行に就職するなど重なる部分は意外に多い。こうした共通点がコミュニケーションのしやすさにつながっているであろうことは、見過ごせない側面だ。 政治資金の不記載問題に端を発した政局劇は、先の総裁選により、旧安倍派、麻生派が非主流派となった。しかし、衆院選で石破政権も与党過半数を割るというつまずきがあり、こちらも土俵の徳俵に足が掛かった状態となった。文字通りの「猫の目政局」である。総裁選で競り合いながら敗れた高市早苗・前経済安全保障担当相、有志議員の勉強会を発足させた小林鷹之・元経済安全保障担当相のほか閣内外を問わず、隙あらば「次」をうかがう動きは出てくるに違いない。 党外では、政権交代を狙って野党の攻勢が激しさを増す。変数が多く、長い神経戦の火ぶたは切って落とされたばかりである。権力者としての岸田氏の一挙手一投足から目が離せない。 市ノ瀬雅人(いちのせ・まさと) 元報道機関勤務。政治分野などを担当した。 デイリー新潮編集部
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