ついに“復権”に動き出した「岸田前首相」 立て続けに「石破総理」と面会、主要ポストは「旧宏池会」が奪い、党内には“再登板”の声も
石破政権の屋台骨
長期政権を目指したものの、自民党派閥による政治資金収支報告書の不記載問題などが襲い、8月に首相退陣表明に追い込まれた岸田氏。ここにきて動向が注目されるのは、旧岸田派メンバーが石破政権を支える屋台骨となっているためだ。 例えば、岸田派でナンバー2の座長を務めた林芳正・元外相は、内閣の要である官房長官に就く。9月の党総裁選では石破氏と激しく宰相の座を争ったが、その林氏を石破首相は「誇るべき友人」として、かねて能力を高く買ってきた。第2次安倍政権時には石破幹事長―林農相のラインで環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への対応でも連携。先の総裁選の各種討論会の前後では「石破氏から林氏に雑談を持ちかける場面も目立った」(関係者)という。
党務でも存在感
党務での旧岸田派メンバーの存在感はさらに大きい。4役は政調会長に小野寺五典・元防衛相、選対委員長に木原誠二・元幹事長代理と2ポストを占める。小野寺氏も従来、外交、安全保障などの面で石破首相が実力を評価してきた一人である。木原氏は岸田政権で官房副長官を務めるなど当時の岸田首相を支えるのに奔走した。 このほか、参院幹事長の松山政司・元一億総活躍担当相は「丁寧な人当たりと実直さが持ち味」(中堅議員)とされ、徐々に権力基盤が浸透しつつあるようだ。党政調で大きな力を持つ税調会長の宮沢洋一・元経済産業相は、岸田氏の親戚筋である。また、広報本部長の平井卓也・元デジタル相、政治改革本部長代行として懸案の政治資金改革を手掛ける田村憲久・元厚労相も旧岸田派だ。
基本路線を受け継ぐ
政治資金の不記載問題を受けて派閥の多くが解散したが、旧岸田派は「メンバーが比較的均質で解散後もまとまりがある」(ベテラン議員)と受け止められている。一方、石破首相は、かつて自身の派閥を率いたが、総裁選での敗北などを機に数年前、掛け持ち可能な緩やかな政策グループへと衣替えした。以降は派閥に属していない。守旧派的なしがらみが薄く、改革を印象付ける「石破カラー」を看板とする半面、党内基盤の源泉である「数の力」は不足する。10月の衆院選で自民、公明両党による連立与党は過半数に届かず、自民党では退陣要求を含めて執行部の責任を問う声が相次いだ。 12月1日に地元鳥取県で神社に参拝した際、石破首相は「政府は野党の言うことに誠実に耳を傾けているという世論が高まっていく以外に難局、少数与党という状況を乗り切っていく手立てはないのではないか」と記者団に述べ、容易ではない政権運営の状況を率直に語っている。 このため、相当規模で「チーム岸田」を維持する岸田氏のバックアップは大きな支えとなる。デジタル田園都市国家構想担当相のポストがなくなるなど、岸田政権の目玉政策のうちの一部は名称を変えたりするものの、石破政権は賃上げ重視といった基本的路線を受け継いだ。資産運用立国の提言を受け取ったのも、この延長線上にある。