群ようこ68歳にしてお茶を習う。4カ月経ち、格式の高い濃茶に挑戦。いろはを唱えて練った初の濃茶は、折れた茶筅の穂先が二本入っていた
文化庁の生活文化調査研究事業(茶道)の報告書によると、茶道を行っている人が減少する中、平成8年から28年の20年間で70歳以上の茶道を楽しむ人は増加し続けているという。人生100年時代の到来で、趣味や習い事として茶道に触れる機会が増えていると考えられる。そんな中、68歳にしてお茶を習うことになった、『かもめ食堂』『れんげ荘』などで人気のエッセイスト・群ようこさん。群さんが体験した、古稀の手習いの冷や汗とおもしろさを綴ります。お稽古に通い始めて4カ月。茶道を学ぶことを許可してもらう「許状」の申請も行い、いよいよ格式の高い「濃茶」にチャレンジすることに――。 書籍:『老いてお茶を習う』(著:群ようこ/KADOKAWA) * * * * * * * ◆いきなり濃茶がきた 何だかやたらと気温が高い日が多くなって、梅雨時で湿気も多く、鬱陶しい日が続いているが、お稽古に通うのは楽しみだった。その日、お稽古にうかがうと、師匠が、 「今日からお濃茶をやってみましょうか」 とおっしゃった。 「えっ、まだお薄もあれこれ間違っているのにですか?」 「大丈夫、やってみましょう」 師匠が膝ひざをつきあわせて、お茶入が入っている仕覆の扱いについて教えてくださった。仕覆の紐が想像していたよりもずっと固い。そうでないと、結んだときに横8の字の形がきれいに決まらないからかもしれない。 結んだ仕覆の紐をひとつほどいて、横8の字の輪の右を右手の人差し指で引いて手首を右に返すと、正しく結んであった場合は、紐がほどけるのだが、そうでない場合は捻れてしまう。練習のときには捻れてしまったので、最初の結び方が間違っていたらしい。 やっと紐をほどいたと思ったら、お茶入が入ったままの仕覆を、畳の上で横にしたり左手の手のひらの上で縦にしたりする。これは闘球氏や白雪さんがお点前をなさっているときに、何となく見て覚えていた。あっちこっちに動かして面倒くさそうと思っていたが、やってみるととても合理的なのだった。
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