横浜F・マリノスをACL決勝に導いた“楽しむ”姿勢。変化を生み出したキューウェル監督の「選手目線」
明日5月11日、ホームにUAEのアルアインを迎えて、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝の第1戦に挑む横浜F・マリノス。本日報道陣に公開された前日練習では、選手たちの表情に溢れる笑顔が見られたという。リーグ戦とACLを並行して戦う肉体的にも精神的にも厳しいシーズンを送りながら、選手たちが口々に「試合を楽しみたい」と語る理由とは? (文・本文写真=舩木渉、トップ写真=YUTAKA/アフロスポーツ)
“罰ゲーム”とも揶揄されるACLで「試合を楽しみたい」の声
皆さんは選手たちのコメントをどのように読んでいるだろうか。 その時の心境、チームの戦略や戦術、これからの展望……見えてくるのはそうした表層的なものだけではない。選手の発言を文字通りに聞いたり読んだりするのではなく、さまざまな視点を論理的に結びつけ、それらの背景に潜むものまで想像を膨らませると、時に新しい発見がある。 また、選手たちの言葉は個々の思考のみから発せられるわけではないことも理解しておきたい。とりわけ組織の方針や監督の発言に影響を受けるため、注意深く聞いているとチーム内でどんなコミュニケーションが交わされているのかが見えてくることもある。 その点において、横浜F・マリノスの選手たちがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)について話す際の内容は今年に入ってから明らかに変わった。過密日程をこなさなければならず、決して楽な大会でないにもかかわらず「試合を楽しみたい」と語る選手が増えたのである。 昨年までだったら「目の前の試合に全力を尽くすだけ」や「過密日程を言い訳にせず、最善の準備をして臨みたい」といった形式ばったコメントが多かったように思うが、今年は違う。ACL決勝トーナメントの試合に臨むにあたっての多くの選手たちの発言を総合すると、こんな感じだ。 「過密日程かもしれないですけど、たくさん試合ができるのは喜ばしいこと。自分たちが頑張ってきた成果であり、強いチームだからこそ立てる舞台なので、その誇りを持ってACLを楽しみたい」 肉体的にも精神的にも消耗が大きいにもかかわらず、リターンが少ないことで“罰ゲーム”と揶揄されることもあったACLに対して、極めてポジティブに臨めている。マリノスがクラブ史上初の決勝進出を果たせた要因の一つには、こうした前向きなマインドの定着があったのではないだろうか。