パリオリンピック・パラリンピックを前に東京大会のレガシーを考える
7月26日開幕のパリオリンピック・パラリンピックに向けて競泳の日本代表が続々と決まるなど、徐々にオリンピックイヤーのムードに突入しつつある。前回の東京オリンピック・パラリンピックは、新型コロナウイルス禍の影響で1年延期され、2021年に開催された。通常より短いインターバルでときの移ろいを感じさせる中、東京大会で整備された会場がどうなっているかも気になるところだ。都民、ひいては国民に親しみを持って利用され、スポーツ実施などの機運醸成に貢献することにより、本当の意味での「レガシー(遺産)」になり得る。東京都のさまざまな施策も見逃せない。開会式まで約4カ月となったパリ五輪を機に、東京大会の会場に焦点を当ててみた。
都の本気度
東京オリンピック・パラリンピックでは建設費抑制などの観点から会場計画の見直しが実施された。その上で、東京都はオリンピック・パラリンピック大会に向けて約1375億円をかけて6施設を新設した。水泳会場の東京アクアティクスセンター、ボートやカヌー・スプリントの会場となった海の森水上競技場、夢の島公園アーチェリー場、バレーボールが行われた有明アリーナは江東区に位置する。この他、江戸川区のカヌー・スラロームセンター、大井ふ頭中央公園海浜公園ホッケー競技場(品川区、大田区)が該当する。東京オリンピック・パラリンピックはコロナ禍によって原則的に無観客で実施されただけに、これら六つを含め、大会後に各競技会場を訪れる人たちにとって貴重な体験の場をもたらしている。 東京都は後利用を促進するために本腰を入れた。2022年「TOKYOスポーツレガシービジョン」を策定したのだ。今後、東京大会の成果をどのようにスポーツの振興に生かしながら都市の中で根付かせていくのか、その方針を示す目的でまとめられた。ポイントの一つに都立施設の戦略的な活用が挙げられ、バージョンアップした会場に触れることによる価値の最大化がうたわれた。都民のスポーツ実施率は2007年の39・2%から、2021年には68・9%と大きく向上したとするデータがあり、世間の潮流に合致している。 また、スポーツだけでなく、各施設の特性に合わせ、グルメイベントの会場やロケ地としてもPRを模索。この動きに、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長は次のようにコメントした。「都市におけるスポーツ活動をさらに振興し、このレガシーを活用していく都のビジョンを歓迎します」と賛辞を惜しまなかった。