【予備電源を確保できないニッポン】なぜ、電力会社は応募しなかったか、AI時代に設備がなくなる可能性
前回の連載(【繰り返される電力融通】猛暑のせいでは決してない、電気が不足し不安定化する理由 エネルギー基礎知識(10) Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp))では、発電設備が不足する事情を説明しました。 【図表】太陽光発電設備導入推移 自由化された市場では、夏季、冬季の一時期だけ使用される利用率が低い石油火力発電設備は利益を生まず赤字になるため、設備を維持することが困難になります。最近も石油火力発電所の閉鎖が相次いで発表されています。 9月27日に九州電力は、設備容量50万キロワット(kW)の豊前2号機を26年3月に廃止し、発電所を閉鎖すると発表しました。80年運転開始のため老朽化が進んでいるためとされています。九州電力の保有設備から石油火力はなくなります。 関西電力は、10月16日に赤穂石油火力発電所を25年7月に廃止すると発表しました。1987年に運転を開始した1、2号機(合計120万kW)の老朽化が進み維持管理の負担が増しているためと報道されています。 関西電力が保有する石油火力発電所は、84年に運転を開始した御坊火力の1号から3号機(180万kW、うち60万kWは休止中)だけになります。 一方、波を打ちながら減少していた電力需要は、今後増加に転じると考えられています。電気自動車(EV)、中長期的には水の電気分解による水素製造が電力需要を押し上げますが、短期的に需要を増やすのは生成AI(人工知能)の利用によるデータセンターと半導体の製造工場の新設です。 このままでは、発電設備が不足する可能性があると考えた政府は、電力需要増、あるいは大規模災害時の電源脱落に備えた「予備電源」を入札で募集しましたが、応札はゼロでした。これからの電力需要増を賄う十分な発電設備はあるのでしょうか。
太陽光発電設備の増加で減少する火力発電設備
全国の発電設備容量は増えていますが、その増加の大半は事業用の太陽光発電設備が占めています。2018年3月時点で約3400万kWだった事業用太陽光設備は24年3月末では約5800万kWに達しています。 太陽光発電設備容量は、10kW以下の家庭用設備を含めると24年3月時点で7000万kWを超えています。 降雪時など太陽光設備がほとんど利用できないにもかかわらず暖房用の需要が増える時などに頼りになるのが石油火力発電設備ですが、減少が続いています。 皮肉なことに、太陽光発電設備が増えると晴天時の発電量が増えるため、石油火力の利用率はさらに下がり、石油火力の維持を難しくします。