【予備電源を確保できないニッポン】なぜ、電力会社は応募しなかったか、AI時代に設備がなくなる可能性
電力需要量は今まで図-3の通り減少していました。この状況が続けば火力発電設備が減少しても大きな問題は起きないかもしれませんが、これからはAIによる電力需要の増加に見合う電力供給量が必要になります。
AIで増える電力需要量
これから短期間に増える電力需要は、AIの使用を支えるデータセンターとそのためにも必要な半導体製造用です。 国際エネルギー機関(IEA)によると、22年の世界のデータセンターの電力消費量は、2400億から3400億キロワット時(kWh)とされ、世界の電力消費量の1%から1.3%を占めているとされます。 ここ数年のデータセンターの電力需要の伸びは大きく、年率20%から40%で成長しました。たとえば、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタのデータセンターの電力消費量は、17年から21年に倍以上の伸びになり、21年には720億kWhに達しました。 IEAは、30年にかけてデータセンターの電力需要量は成長するものの、途上国での成長による消費増、EV導入、電化の進展による消費増との比較では、それほど大きくはないとしています。 IEAは現在の政策が継続する場合には30年の世界の電力消費量は今から20%以上、6兆7600億kWh伸びると見ています。今の米国と欧州連合(EU)27カ国の消費電力量に相当する増加です。 途上国での需要増が全体の約8割を占めるとされており、データセンターの需要量増加のシェアは全増加の10%以下と想定されています。 しかし、国により事情は大きく異なりそうです。EU加盟国のアイルランドではデータセンターの建設が続いています。米国とEUの2大需要地の中間にあり、EUのセキュリティーが適用されているのが、アイルランドで新設が続く大きな理由です。 同国の15年のデータセンターの電力需要量は全体の5%でしたが、昨年は21%に達し、31年には28%に達する見込みです。 世界のデータセンターのほぼ半数を持つ米国のデータセンターの昨年の電力需要量は約1500億kWh。全需要量の4%弱でしたが、米電力研究所は30年にもっとも成長する場合には需要量は4000億kWh強、低成長の場合でも2000億kWh弱と想定しています。 既にバージニア州、アイオワ州など5州ではデータセンターの電力需要量のシェアが全体需要量の10%を超えています。30年にはバージニア州の電力需要量の29%から46%をデータセンターの需要が占めると予想されています。