<ソチ五輪>上村愛子、母の前でラストラン
決勝が行われた8日も、村田愛里咲(行学学園教)が決勝直前の公式練習で転倒して左ひざを負傷。救急車で選手村に直行し、こちらも棄権を余儀なくされた。検査の結果、左ひざ前十字じん帯損傷の大けがだった。 だが、上村は自分の滑りに集中した。「今回はチーム全員がすごく強い状態で、皆で上にいけたらいいねと話していた。ケガして出られなかったりとか、そういう思いをした選手が何人もいたけど、後ろを向いている場合じゃないと思った」 決勝1回目は、スタートでバランスをやや崩してしまったが、第1エアでヘリコプター、第2エアでバックフリップを決めて20人中9位で2回目に進出。上位12人による決勝2回目でも第1エアのヘリコプター、第2エアのアイアンクロス・バックフリップを決めて6位でスーパーファイナルに進出した。本人が振り返った通り、すべて攻めきる滑りだった。 「本当にすがすがしいです。もちろん、メダルを取れていればうれしかったし、でも、7位だったとしても同じ気持ちだったと思います。滑り切ったときの満足度がすごく高い」 18歳で出た長野五輪から、16年が過ぎた。山あり谷ありのモーグル人生だが、五輪での5大会連続入賞という胸を張ることの出来る結果も残した。母は「長野のころは楽しんでやっていた。ソルトレークシティーからはやらなければという気持ちで、本当にがむしゃらだった。でもバンクーバー後に休養を挟んだ今は、結婚したということもあって、以前よりリラックスしているように見えていた」と話した。 「悔しい思いはない。五輪は本当に楽しいところです。悔しい思いも苦しい思いもするけど、成長できるところ。最高の場所です」。上村の挑戦がさわやかに幕を閉じた。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)