<ソチ五輪>上村愛子、母の前でラストラン
スタートから勢いよく飛び出して行ったカーニーは第1エアを難なくこなしたものの、第2エアーまでの間にターンでスキー板が流れ、バランスを崩す。片足が明らかに宙に浮くミス。その後どうにか持ち直して第2エアを成功させたが、採点を待つ間の表情は曇っていた。 上村、悲願の銅メダルか。だが、結果は無情だった。カーニーに出された点は上村を上回っていた。違和感をぬぐうのが困難なようなジャッジ。しかも、最後の最後に逆転されて4位に終わったのはバンクーバー五輪とまったく同じだ。城勇太コーチが「僕も銅メダルかと思いました。ハナ?やっぱり名前というのもあるんですかね」と無念そうに振り絞る。 けれども、上村はさわやかだった。「私も、これはもしかして(表彰台に)乗ったかなと思いましたが、カーニーの順位を見ていて、『3』と出た時に、『はい、分かりました!』という感じでした」 ワンツーフィニッシュを飾ったジュスティーヌ・デュフールラポワントとクロエ・デュフールラポワントのカナダ人姉妹を祝福し、カーニーとも抱擁した。誰よりも焦がれていたメダルを逃した悔しさではなく、メダリストたちを称える気持ちを見せた。すると、ゴーグルの中で涙が溢れてきた。上村の胸の中には「わたしの五輪史上最高のパフォーマンス」という思いが広がっていたのだ。 「長野五輪の時は、気持ちはすごく良かったけど、技術はそこまで良くなかった。バンクーバーやトリノではちょっとしたミスをしたり、攻めきれない滑りをしていた。でもソチ五輪では、すべて全力アタックできていた。メダルを取ることはできなかったけど、すがすがしい気分。全力で滑れたので、点数を見ずに泣いていました」 5度目の五輪コースは、かつてないほど難しいものだった。アイスバーン状態の雪面、不揃いなコブ。6日の予選前の公式練習では所属チームの後輩である伊藤みきがエアーの着地で右ひざ前十字じん帯の負傷を悪化させ、無念の欠場となった。