韓国の文化・サブカルチャーが国際的に注目された一年だったが、では「ウェブトゥーン(縦読み漫画)」は?
2024年もK-POPやハン・ガンのノーベル文学賞受賞をはじめ、韓国の文化・サブカルチャーが国際的に注目された一年だったが、ウェブトゥーンは世界ではどうだったのか。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言 投資家の予想を下回る成長だったことでNAVER Webtoonを運営するWebtoon Entertainmentの株価は2024年5月の上場当初に付けた最高値25.66ドルをピークに最近は12、3ドル付近で低迷しているが……。 中編記事『じつは韓国よりも日本のほうが「人気ジャンルの幅が狭い」…ウェブトゥーン(縦読み漫画)業界における「日韓の違い」』より続く。
プチョン国際漫画フェスティバルで聞いた海外のウェブトゥーン市場事情
筆者は今年(2024年)、韓国漫画博物館があるプチョン(富川)市で毎年開催されている国際漫画フェスティバルに招待されて講演し、また、各国のウェブトゥーンや電子コミック事業者の講演も聴講してきたのだが、多くの国の人間が似たようなことを言っていた。 「うちの国ではもともと独自のコミックが紙ベースで展開されていた。そのあとでデジタルコミックがやはり独自に登場してきた。さらにそのあと韓国のウェブトゥーンが入ってきた。よく読まれている作品もあるが、紙のコミック市場と比べてデジタルでの課金はそんなにうまくいっていない。なぜならうちの国で売れるコミックのパッケージや流通、ビジネスモデルはこういうもので、ウェブトゥーンとは大きく異なる。韓国と同じようにやればいけると思わないでほしい。マーケティングやプロモーションの方法も、うちの国に合わせてやってもらわなければ刺さらない」 だいたいこういうものだ。 日本で北米産のグラフィック・ノベルや欧州産のBD(バンド・デシネ)がポピュラーな地位を獲得しているとは言えず、逆に大半の国でいまだにアニメ鑑賞と比べても日本マンガを読むのはマニアックな趣味とみなされていることを思えば、韓国のウェブトゥーンだけが国際的にすんなり受けいれられるはずもない。 もっとも、ウェブトゥーンサービスのユーザー数は増えている。 韓国コンテンツ振興院(KOCCA)『漫画産業白書』2024年版の第3部は海外のコミック市場とその中での韓国漫画・ウェブトゥーンについてまとめているが、NAVER Webtoonは2024年時点で北米のMAU(月間アクティブユーザー)が約2,000万、フランスでも平均234万と着実に伸びている。 しかし収益化がうまくいくかは別の話だ。 カカオピッコマはフランスでのサービス撤退を2024年5月に撤退した。NHNはベトナムでのサービスを終了し、comicoのタイ法人を売却して東南アジア市場から事実上撤退した(この背景には、東南アジアでは海賊版の流通が激しいこともある)。中国では約2000社のウェブトゥーン制作スタジオが立ち上がったと言われるが、そのほとんどが短期間で廃業した。 日本や韓国のように、スマホ時代になってデジタルコミック市場が爆増し、紙のマンガを上回る推定販売金額になったような国は、例外的なのだ。