「(最近の日本代表に相当する選手は)謙虚さに欠くところがある」…ラグビー日本代表指揮官が発した「意外なことば」と「キャプテンに求めたもの」
ラグビー日本代表の指揮官に就任したエディー・ジョーンズ
ラグビー日本代表は発展途上にある。 エディー・ジョーンズヘッドコーチは「自分の経験上、どんなチームも(再構築には)3年はかかる」と公言した。 【マンガ】外国人ドライバーが岡山県の道路で「日本やばい」と驚愕したワケ 2019年のワールドカップ(W杯)日本大会では初の決勝トーナメント進出も、その頃と同じ体制で臨んだ昨秋の同フランス大会では予選敗退。その時点で、メンバーの平均年齢は上がっていた。その後は代表引退を表明する人もいれば、国際舞台へ戻るのには休息やリカバリーが必要な人もいた。 ジョーンズが約9年ぶりにジャパンの指揮官となったのは、そんなタイミングだった。公募を経てのことだ。 ‘15年のW杯イングランド大会で南アフリカ代表などから歴史的3勝を挙げた64歳は、この国の本質的な強みを「集団的なスピード」と見立てる。 打ち出したのは『超速ラグビー』。機動力と運動量と加速力で圧をかけるコンセプトだ。 「今後目指したいのは、世界でベストな超速ラグビーができるようになること。何色のジャージィを着てプレーしても、『これはジャパンだ』とわかるまでにします」 今年になってから正規の日本代表としてデビューをした選手は17名にのぼる。キャンプへ呼んだ大学生は、練習生や準代表扱いを含めると合計9名に及ぶ。 老いと距離を置くベテランコーチは、最近の日本の若者の育った環境を看破。新時代に適応し、頭ごなしに叱るのを控える。 「『これが問題だ』と指摘するのではなく、『何が問題だと思う？』と引き出します」 今年6月から9月までの戦績は4勝5敗(非テストマッチを含む)。ストレングス＆コンディショニング部門で信頼するジョン・プライヤー氏とともに、段階的に個々の筋力、持久力を引き上げる。 「現状、それ(理想通りの攻撃)は30分しかできない。ただし4年後の2027年には、80分できるようになる」
謙虚さを欠いている
プレー以前の領域にも着手する。 「謙虚さ」である。 9月にあったメディア向けの会合で、「(最近の日本代表に相当する選手は)謙虚さに欠くところがある」とスピーチした。いまの日本代表選手たちの真摯さ、向上心を知ったうえで、より見直して欲しいと感じた点を告げたのだ。 引き合いに出したのは、’16年から約7年間、率いたイングランド代表での思い出だ。最初の主将をディラン・ハートリーにした背景を交え、このように語った。 「私は、いつも(チームが泊まる)ホテルでの他の方々への振る舞いが大事だと思っています。イングランド代表でキャプテンをどうしようかと考えていた時、ホテルでディラン・ハートリーを見ました。ハートリーは朝食が終わった後、給仕の方のもとへ走っていき、『おいしかった。ありがとう』と話していました。給仕の方に聞くと、『彼は私たちの名前を覚え、いつも声をかけてくれる』とのことでした」 ’16年以降のイングランド代表は、欧州6か国対抗のグランドスラムを皮切りにテストマッチ17連勝を記録。‘19年のW杯日本大会では準優勝に輝いた。‘15年のW杯では開催国ながら予選敗退と不振にあえいでいたなか、見事に失地回復を果たした。 時を経て再来日し、代表やその候補のキャンプを指揮すると、「本当にその辺が欠けていて…」。たまたまかもしれないが、共用スペースにごみが置きっぱなしになっているのに気付いてしまった。 「チームが成功体験を持っている時は、ロールモデル(手本)がいる時だと思っています。逆に、ロールモデルがいない時には悪い癖がはびこり、それがフィールドにも表れます」 ただ訓告するのではなく、伝えたいことを受け手に実感させるための工夫も凝らした。「ロールモデル(手本)」を可視化したのだ。
