小惑星採掘のアストロフォージ、2025年1月に「深宇宙」商業ミッションへ–米連邦通信委員会から初の承認
小惑星の資源採掘を目指す米AstroForge(アストロフォージ)による商業ミッションに米連邦通信委員会(FCC)が初めてライセンスを交付した。 今回FCCから発行されたライセンスは、2025年1月に実施予定のAstroForgeの2番目のミッション「Odin」(オーディン)に適応されるものだ。今回のライセンスで同社は地上無線局との通信ネットワークを構築し、Odinに指令を送り、データを地球に送り返すことが可能になる。 FCCが発行したライセンスは、国際電気通信連合(ITU)が地球から200万km以上と定義する「深宇宙」で商業ミッションとして許可された初めてのものになる。AstroForgeは今回のライセンスについて「深宇宙で同様の偉業を成し遂げようとする将来の企業にとっての先例」と説明している。 重量100kgのOdinは、同社にとって最初のミッションとなった探査機「Brokkr-1」よりも大型で、米Intuitive Machinesによる月着陸ミッションの第2弾「Intuitive Machines 2(IM-2)」に相乗りして小惑星をめざす。Odinはターゲットとなる小惑星に近づいて撮影することが目的。Odinが撮影した小惑星の画像は、AstroForgeの3番目のミッション「Vestri」(ヴェストリ)に生かされる。 重量200kgという探査機Vestriは小惑星に含まれる元素の質や量などを調査することが目的。Intuitive Machinesの第3弾「Intuitive Machines 3(IM-3)」に相乗りして2025年中に打ち上げられる予定だが、このスケジュールは変更される可能性がある。 Brokkr-1は2023年4月に打ち上げられ、地球周回軌道に到達した。しかし、同社の精製技術を微少重力下で起動することはできなかった。 AstroForgeは地球近傍の小惑星からの金属資源の採掘を計画している。同社が小惑星から採掘しようとしているのはプラチナやイリジウムなどの白金族元素(Platinum Group Metals:PGMs)。M型小惑星に含まれているとみられているPGMsは、自動車の排ガスを濾過する触媒コンバーターや抗癌剤などに使用されている。PGMsはまた、次世代クリーン技術にとっても重要な原料と期待されている。 PGMsの需要は今後も大きく伸びると言われている。だが、AstroForgeによれば、PGMsの地上での採掘は、毎年2万ヘクタール(東京ドーム約4278個分)以上の手つかずの土地を破壊し、何百万トンもの有毒廃棄物を生み出しているという。小惑星からPGMsを採掘することは脱炭素経済時代では合理的と同社は説明する。 小惑星を資源として注目している企業は、AstroForgeの他に英Asteroid Miningや日本のAstromineがある。 Intuitive Machinesによる月着陸ミッションは、米航空宇宙局(NASA)が観測機器などの貨物(ペイロード)の月への輸送を民間企業に有償で委託する「商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services:CLPS)」の一環。 第1弾ミッション「Intuitive Machines 1(IM-1)」は2024年2月に打ち上げられ、着陸船(ランダー)の「Odysseus」(オデュッセウス、Nova-C級)は民間企業で初めてとなる月着陸に成功した。第2弾ミッションのIM-2には、日本のダイモンが開発する小型の探査車(ローバー)「YAOKI」も搭載される予定。YAOKIとランダーの統合テストは成功している。
塚本直樹