リーダーに「教養」を求める企業が急増する背景 上智大学・曄道学長「教養は個性や志を育む」
曄道:会員企業の社長、副社長はじめ役員の方々、あるいは人事責任者の方と話をし、認識を共有したのは日本のキャリア形成や教養教育はグローバルスタンダードではないということでした。 さらに、教養というものを考えたときに、豊かな教養が人間同士の信頼関係の重要な基盤となるのであって、ビジネスで厳しい交渉事を行う人たちにとって、教養はとりわけ大切な要素であるにもかかわらず、日本の教育現場ではそのことが軽視されているという、私が危機意識として感じている点についても認識を共有できました。
堀内:最近はコスパ重視の社会になっていて、ゴールが明確で、これを学ぶとこういう効果があるといったプログラムが人事部門では受けがよいようですが、教養はこれとは逆で、すぐには効果が表れる類のものではないと思います。この点、どのように企業との対話でクリアされているのでしょうか。 曄道:その点に関しては、実際にコスパ的なお話をされる企業の方もいらっしゃいます。先ほども述べましたが、人間どうしの信頼関係というのは、その人のスキルやお互いの損得だけで成立するわけではなく、やはり教養という人間の軸が問われる部分が大きいと思っています。この信頼関係の構築と教養の大切さについて共感いただいた企業の皆さんが参加してくださっています。
しかし私は、ある程度、共通の目的を持つ人たちが集まったほうが、そこで何かが生まれると期待できると考えていますので、これを肯定的に受け止めています。現在のところ、30社近い企業に賛同いただいていますが、これは当初の私の期待を超えるものです。 堀内:最後に「教養とは何か」について、改めて曄道先生のお考えを聞かせていただけませんでしょうか。 曄道:教養とは何かという問いは、かなり哲学的な意味を持つ問いだと思いますが、私なりの解釈を申し上げると、たとえば教養という言葉は大学の中で使われるときに、なぜか「一般教養」という言い方をされることが多い。どうして「一般」という名称を付けたのだろうかと思うのですが、そこは「一般」ではなく、「個」としての教養であるべきだと。