【米国株ウォッチ】CEO入れ替えなど改革進むGAP、今後の株価の行方は?
アパレル大手Gapの株価(ティッカーシンボル:GAP)は2024年に17%上昇した。それに対し、同期間におけるS&P500の上昇率は23%で、Gapの競合にあたるGuessの株価は同41%下落だった。 ■直近の業績動向 近年、Gapの収益は減少傾向だ。2021年の167億ドル(約2兆6400億円)から2023年には149億ドル(約2兆3500億円)へと11%減少している。しかし、同社はコスト削減策を実施しており、リチャード・ディクソンを新しいCEOに招聘したことを含む、主要幹部の人事にもテコ入れをするなど、収益と利益の成長を推進してきた。その結果、2024年度の既存店売上高がプラスに転じるなど、好転を示している。 今後について言えば、不採算店舗の閉鎖に成功するなど、同社の戦略的変革を反映した収益の伸びがますます期待されるだろう。2024年度1~9月期の収益は前年同期比3%増の110億ドル(約1兆7400億円)となり、売上総利益も増加した結果、EPS(1株あたりの純利益)は前年同期の0.86ドルから1.70ドルへと増加した。売上総利益率は大幅に拡大し、2024年度1~9月期には3.5ポイント改善の42.2%となった。この改善は主に、販促活動の削減へ向けた同社の戦略的シフトによるものである。また、経営陣が在庫問題を解決したことも一因である。2024年度第3四半期の在庫は前年同期と比べ、2%の減少となった。 アパレル業界の成功は個人消費にかかっており、それは個人の消費マインドと密接に結びついている。消費マインドはパンデミック当時の低水準からは回復したものの、依然としてそれ以前の水準には及ばない。最新の米消費者信頼感指数(CCI)は、10月と11月に慎重な楽観論が優勢だった後、12月は104.7に低下した(10月は108.7だった)。ちなみに、パンデミックが発生する直前の2020年2月には132.6に達している。 ■目標株価と今後の行方 2024年度決算におけるGapの年間収益は、前年度比1.5%増の151億ドル(約2兆3900億円)、EPSは2.10ドルになると私たちは予想する。また、収益とEPSの予想を修正したことを踏まえ、上述したEPSに10.6倍のPER(株価収益率)を掛け合わせ、Gapの目標株価は22ドルとした。 同社の第3四半期の既存店売上高は1%増だった。セグメント別では、売上高の半分以上を占めるオールドネイビーの既存店売上高は1%増と、前年同期比で横ばいだった。社名を冠したGAPブランドの既存店売上高は3%増、アスレタの既存店売上高は第3四半期に5%増加した(2023年第3四半期は19%減だった)。バナナ・リパブリックの既存店売上高は1%減少したが、それでも昨年の8%減よりはましだった。注目すべきは、バナナ・リパブリックとアスレタを合計した売上高が、全体の売上高の20%にも満たないことだ。これは、同社が少数のコアブランドに依存していることを示している。 Gapは2024年度における収益成長率を1.5%から2.0%増とし、営業利益は60%台半ばから後半の伸びを見込んでいる。また、売上総利益率は少なくとも2.2ポイント改善し、41%程度になるという。同社は、オールドネイビーとGAP(ブランド名)が2024年度も引き続き好調に推移すると予想している。
Trefis Team