ドジャース・大谷 3度目MVPは「一家」で歓喜…デコピン逃走 爆笑発表劇に
ドジャースの大谷翔平投手(30)が21日(日本時間22日)、ナ・リーグMVPに選ばれた。エンゼルス時代にア・リーグで獲得した21、23年に続く満票受賞で、昨年の2度目の満票でも史上初の快挙だったが更新した。3度目の選出回数は歴代2位に並び、DH専任の選手のMVPは史上初の快挙。真美子夫人(27)、愛犬デコピンの「大谷一家」で初の歓喜となった。 これまでと心持ちが違う。ベージュのセットアップで決めた大谷は、幸せそうな笑みを浮かべた。愛犬デコピンを挟んだ右隣にはワンピース姿の真美子夫人が見守った。大リーグ専門局での発表中継。プレゼンターを務めた同僚左腕カーショーが大谷の名前を呼ぶと、真美子夫人が「(発表)したみたいだよ」と驚き、大谷も「やば、全然聞いてなかった」と苦笑した。 拍手が起こると、驚いたのかデコピンは床に逃走。大谷は「あああ!」と目を見開いて慌てた。その後は見守ったネズ・バレロ代理人らとハグをし、最後は元バスケットボール選手の真美子夫人とアスリート同士らしくグータッチで喜んだ。 大谷は初受賞した21年、最終候補入りした22年はともに1人で中継に登場。2度目の受賞の23年はデコピンと現れ、日米のファンを驚かせた。この日、日本時間11月22日は「いい夫婦の日」。「理想の有名人夫婦」の1位に選ばれたばかりで、3度目の受賞は2人と1匹の「大谷一家」で喜びを分かち合った。 北米プロスポーツ史上最高の10年総額7億ドル(決定時約1015億円)で移籍した今季は、史上初の「50―50(54本塁打、59盗塁)」を達成。最終候補に残ったメッツの遊撃手リンドア、ダイヤモンドバックスの二塁手マルテを寄せ付けず、DH専任選手のMVPは史上初だ。両リーグでの受賞は61年にレッズ、66年にオリオールズで選ばれたフランク・ロビンソン以来58年ぶり2人目で、両リーグにまたぎ2年連続選出は初めて。ワールドシリーズ(WS)制覇に続く勲章に「評価してもらえて素直にうれしい。チームを代表してもらった賞。今年一年で言えば、満点に近い結果だったかなと。個人は別として、チームとして結果を出したので」と喜びを語った。 WS第2戦で左肩を脱臼し、5日に手術。利き手ではないが、投球プログラムを数週間は行えない。昨年9月の右肘手術からの復活へ、投手での復帰の遅れが懸念されるが、左肩は既に抜糸を終えたという。「ついさっきから体幹トレーニングと下半身のトレーニングがスタートした」と受賞直前に本格始動したことを明かした。 来年3月18、19日に東京ドームで行われるカブスとの開幕シリーズでの投打二刀流復帰は諦めていない。「もちろんスタートから投げる、打つのを目標に動いています」。大谷はいつも、想像を超えてくる。(柳原 直之) ≪新人王&移籍1年目で受賞のロビンソンとの「共通点」≫過去に唯一、両リーグでMVPを受賞したフランク・ロビンソンと大谷には共通点がある。2人とも新人王を獲得。ロビンソンは61年にレッズ、66年にオリオールズでMVPに輝いたが、オ軍での2度目の受賞は大谷同様に移籍1年目だった。 その66年は打率.316、49本塁打、122打点。黒人選手初の3冠王となり、ワールドシリーズMVPにも輝いた。通算586本塁打は歴代10位。75年にはインディアンス(現ガーディアンズ)で選手兼任で黒人初の大リーグ監督に就任した。その際に「願いがかなうなら、ジャッキー・ロビンソンに黒人監督が現実になったことを見届けてほしかった」とコメント。大谷がアジア系選手の可能性を広げ続けているのと同様に、ロビンソンは黒人選手の地位確立に存在感を発揮した。 背番号「20」はレ軍、オ軍、イ軍の3球団で永久欠番。82年に野球殿堂入り。大リーグ機構でもコミッショナー補佐、ア・リーグ会長などを歴任した。19年2月に83歳で死去。 ▽大リーグのMVP 全米野球記者協会の記者投票で決まる。ア、ナ各リーグ15球団の番記者が2人ずつ、計30人が選ばれ投票。10位までを選び、1位=14点、2位=9点、3位=8点と1点ずつ減って10位が1点。投票はポストシーズン前に締め切られる。日本選手では01年にイチロー、21、23、24年に大谷が受賞。1911年に制定され、31年から現行制度となった。 ▼日本ハム・栗山英樹前監督 右肘の手術明けで本来なら試合に出られる状況になかった今季。それが二刀流だからこそ打者で試合に出続けることができた。二刀流の意味はそこにあり、試合に出続け、ドジャースを勝たせた。それは本当に凄いことだし、これが大谷翔平の進む道なんだと思う。数字どうこうではない。野球は試合に出続けないとうまくならない。試合に出続けることの大事さを示してくれた。それが評価された結果だと思う。 ▼花巻東・佐々木洋監督 「ドジャースでワールドシリーズ制覇」、「世界最高のプレーヤーになる」。大谷選手は今季、高校時代に書き記した目標をまた実現しました。何を目指し、何をすべきか明確にして思い描いたものを実現していく姿に、感動を覚えます。できるかどうかは「過去」に基づき判断するのではなく、「知識」よりもはるかに想像力や強く思い描くことが大切だと教わった気がします。3度目のMVP受賞、59盗塁など想像もできませんでした。岩手県、花巻東高に元気や夢を与えてくれる活躍に感謝します。「ありがとう」と伝えたいです。