【米国株ウォッチ】追い風が吹くJPモルガン、しかし株価は割高水準か
年初来のS&P500種株価指数の上昇率が約28%であるのに対し、JPモルガン・チェース株(ティッカーシンボル:JPM)の同期間における上昇率は約48%だ。比較として、JPモルガンの同業であるウェルズ・ファーゴの上昇率は約50%となっている。 本稿では、JPモルガンの直近の業績動向と、今後の見通しを解説する。 ■直近の業績動向 JPモルガンは2024年度第3四半期(Q3)の決算において市場予想を上回る業績を達成した。総収益は前年同期比7%増の427億ドル(約6兆4600億円)で、純金利収入もバランスシート・ミックスの変化、クレジットカード残高の増加、法人向け預金の増加などの要因により、前年同期比でわずかに増加した。マーケット部門を除く非金利収入は、資産運用報酬の増加と投資銀行業務の改善により、同17%増と大幅に増加した。しかし、当期純利益は、貸倒引当金繰入額の増加により、同約2%減の129億ドル(約1兆9500億円)となった。 驚くべきことに、JPモルガン株は過去3年間、いずれも市場全体を上回るリターンを上げている。2021年におけるJPモルガン株の年間リターンは28%、2022年はマイナス13%、2023年は31%だった。 ■今後の見通し 今後、JPモルガンを取り巻く状況はさらに良くなる可能性がある。9月に始まった米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げもあり、Q4の純金利収入は改善する可能性が高い。 これとは別に、ドナルド・トランプが2期目の米大統領に選出されたことも、金融セクター全体に恩恵をもたらすと考えられている。投資家たちは、トランプ政権が規制緩和を重視することで、バイデン政権と比べて銀行監督へのアプローチが甘くなる可能性に賭けている。これにより、銀行は取引量や融資活動の増加を通じて収益を拡大するほか、コンプライアンス・コストが低下することで収益性が高まる可能性もある。 トランプは減税にも賛成しており、これもJPモルガンのような銀行の収益に貢献する可能性がある。民主党と比較して自由市場を支持する共和党が上院と下院の両方を掌握したこともJPモルガンにとっては追い風となろう。選挙後の金利低下と政治的確実性の高まりは投資銀行業務を活性化させ、債券や株式の発行が増加し、M&A関連の業務も増加する可能性がある。 こうした追い風が吹く一方で、JPMモルガンは銀行業界において最も質の高い企業の1つであり、その規模も大きいが、株価は割高であると私たちは考えている。JPモルガンの株価は、同社の1株あたりの有形資産(会社の純資産からのれん代を差し引いたもの)の2.5倍以上で取引されており、私たちの考えでは割高だ。米国時間12月9日現在の株価である約243ドルは、私たちの目標株価である約211ドルよりも約15%高い水準となっている。
Trefis Team